官々愕々 理研は利権
理化学研究所・理事長の野依良治氏〔PHOTO〕gettyimages

STAP細胞に関する騒動が続いている。小保方晴子氏、理化学研究所、共同研究者すべてに厳しい批判が浴びせられている。

しかし、その陰で、官僚が「利権」拡大の動きをしていることは報じられていない。

「特定国立研究開発法人」という新しい制度を作るための法案の国会提出が先延ばしになっていることをご存知だろうか。この制度で認められる「特定国立研究開発法人」に指定されると、国から巨額の予算がもらえるだけでなく、国際的に優秀な「スター研究者」を億単位の報酬で招くことができるなど、世界最高水準の研究遂行体制が整備されるというものだ。

何故か法案成立前にもかかわらず、3月には、理研が「候補」に選ばれていたのだが、STAP細胞騒動が起きたので、菅義偉官房長官は、この法案の閣議決定を先延ばしする方針を示した。騒動の原因を解明し、対策をとった上で法案を国会に提出し、成立後に理研を指定する意向だという。

マスコミは何も指摘しなかったが、これは、非常におかしなことだ。なぜなら、理研は、あくまでも特定国立研究開発法人の一候補に過ぎない。実は、他にも候補がいる。理研同様、国の独立行政法人である産業技術総合研究所である。本来は、法案を早く成立させ、理研の指定は見送って、産総研だけを指定すればよいはずだ。

では何故、法案提出が先送りされたのだろうか。実は、この法案は、元々「理研のための談合法案」だったからである。

理研には役職員に現役の文科省官僚が出向し、給料を払ってもらっている。文科省にとっては大事な独法である。そこで、理研の所管官庁である文科省(旧科学技術庁)の官僚たちが、自らの「利権」の源である「理研」に巨額の予算を流し込んで、好きなように使える仕組みを作ろうとしたのだ。ライバルの経産省所管の産総研だけが指定されてそこに今年度の巨額の予算が流れる、なんてことは文科官僚にとっては到底許せることではない。
ちなみに、特定法人への指定をしてもらうためにSTAP細胞の論文発表を急がせたという報道もあったが、それはまったくピントはずれだ。はじめから理研を指定する予定の談合政策だからSTAP細胞の論文など必要ないのだ。

今、文科官僚が考えているシナリオは、小保方氏に全責任を負わせて幕引きし、理研には簡単な原因究明と対策を実施させて、特定国立研究開発法人認定の環境整備をする。理研の指定を確実にしてから法案を国会に提出するという段取りだ。それによって、ライバルの産総研だけが巨額の予算を獲得してしまうことを回避できる。

理研の尻を叩いて、理研の申し出により野依良治理事長じきじきに自民党の部会に出席して説明を行わせたのもそのため。自民党の部会など、呼ばれても行きたくないものだが、障害を取り除くためになりふり構わずというところだ。理研内部の調査で、小保方氏に対する簡単なヒアリングだけで研究不正を認定したのも同じ思惑だ。

さらに、第三者による改革委員会の議論も研究運営体制などに対象を絞らせ、来月にも提言をまとめさせる。これを受けて対策を講じれば、一件落着という狙い。最悪でも秋の臨時国会で法案を成立させ、理研を指定して、今年度の多額の研究費を確保するわけだ。

こんな文科官僚の談合シナリオを認めてはいけない。理研の今年度の指定を見送り、産総研だけで特定国立研究開発法人制度をスタートさせるべきだ。理研は、野依理事長はじめ幹部が退任して襟を正し、来年度あらためて指定の申請をするのが筋だろう。

『週刊現代』2014年5月3日号より

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原発は「倫理的」に許されないエネルギーだという議論をすると、それは「感情的」あるいは「主観的」な議論であるというレッテル張りをされる傾向があります。経済論や技術論は受け入れられても倫理論は受け入れられないのが現状だと言ってよいでしょう。しかし、倫理の問題は、経済や技術の分野でも非常に重要な問題です。二人の元総理(小泉氏と細川氏)が期せずして脱原発を「人の生き方の問題」「倫理の問題」として語り始めたことは、極めて重要な意味があります。私が小泉氏や細川氏に期待するのは、大きな哲学、「脱原発の倫理観」を国民に提示し、国民的大議論を巻き起こすことです。議論の末、国民の大多数が新しい日本の生き方、「脱原発と再生可能エネルギーで、自然とともに生きる国日本」を目指すという共通の目標に到達すれば、その時初めて、脱原発が可能になるのだと思います。――<「はじめに」より抜粋>

※本書は2013年5月に先行発売した電子書籍『原発の倫理学 古賀茂明の論考』の内容を大幅にアップデートした上で再編集したものです。