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屋上屋を架す文部科学省の新・大学補助金

2014年04月27日(日) ドクターZ
週刊現代
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〔PHOTO〕gettyimages

文部科学省が新たな補助金制度をスタートさせる。日本の大学の国際競争力の向上を目的に、全国30校を「スーパーグローバル大学」に指定し、億単位を補助するという。具体的には、世界の大学ランキングの100位以内を目指す力のある大学を「トップ型」とし、指定した10校に最大で年間5億円、先進的な研究や取り組みを行う「グローバル化牽引型」も20校指定し最大で3億円をそれぞれ補助する。

4月から大学側への説明会が始まり、来月には募集を開始するというが、はたしてこの制度はうまくいくか。そもそも、大学の「グローバル化」とか「世界レベル」はどう考えたらいいのだろうか。

大学の世界ランキングは、いろいろな機関から出されている。かつては英語圏の大学に有利すぎるものが多かったため、世界各国で作られるようになった経緯がある。その中で有名なものには、イギリスのタイムズ紙が出しているタイムズ・ハイアー・エデュケーションによるランキングがある。文科省もしばしば審議会資料で引用しているものである。

その「2013-2014版」によれば、世界ランク100位以内の日本の大学は、東京大学(23位)と京都大学(52位)の2校しかない。日本の大学を10校以上選ぼうとすると、世界ランク350位まで広げなければいけない。東京工業大学、大阪大学、東北大学、名古屋大学、首都大学東京、東京医科歯科大学、北海道大学、九州大学、筑波大学が出てくる形だ。

これらが「トップ型」の有力候補なのだろうが、何のことはない。このうち首都大学東京以外は、国立大学、しかも旧帝大がほとんどである。

ちなみに、2013年度の国立大学運営費交付金のベスト10を見ると、東京大学783億円、京都大学520億円、東北大学446億円、大阪大学438億円、筑波大学393億円、九州大学388億円、北海道大学357億円、名古屋大学302億円、広島大学244億円、東京工業大学202億円と、トップ型の候補とかなり重複している。屋上屋が否めない。

こうした国立大学には、文科省からの天下り官僚が事務局に入っている。さらに、カネを付けて、天下りシステムを強固にしたいのだろうか。

億単位の公的支援なら、他のいい方法がある。民間からの大学への寄付を税額控除するのだ。つまり、民間から大学へ寄付すればその分の税金が少なくなるようにする。そうすれば、民間企業から数億円の寄付が出てくる一方、その分の税金収入は減少するので、文科省の予算は少なくなる。従来の補助金が、税金で吸い上げて文科省の官僚が予算で「箇所付け」するのに対して、この寄付制度は文科省の官僚に代わって民間が「箇所付け」るのだ。

こうしたことを言うと、「民間では適正にカネを使えず、官が公平にやらなければいけない」という官からの反論がすぐ出てくる。しかし、官が天下りをセットとしてカネを付けるのと、どちらがいいかという問題だ。少なくとも、「スーパーグローバル」という以上、官がカネを吸い上げて、官が天下り先とセットで支出先を選ぶという古びた発想はもうやめたほうがいい。

世界ランク100位以内で教育を受けていないような文科省官僚が、それらに対抗していく大学を選べるとは思えない。まだ寄付制度によって、民間の知恵とカネを活用する方が、大学のレベルを引き上げる妙手になる気がするのだが。

『週刊現代』2014年5月3日号より

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