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韓国企業にしゃぶられるだけ、しゃぶられて「東芝のスパイ」はゴミのように捨てられた
〔PHOTO〕gettyimages

産業スパイ天国。日本企業は情報管理が甘く、技術者の待遇が悪いため、技術に飢えた中韓の企業による格好の草刈り場となっている。厚遇に惹かれて海を渡った技術者には過酷な運命が待ち受ける。

冷遇した古巣を見返したい

「スパイ」の末路は哀れなものだった。

東芝の企業秘密を韓国の半導体大手「SKハイニックス」(以下、SK社)に漏洩したとして、杉田吉隆被告(52歳)が不正競争防止法違反(営業秘密の不正開示)罪で起訴された。

「韓国の企業から億単位のカネを稼いできた。一生働かなくても遊んで暮らせるカネがある」

周囲にそう吹聴していたという杉田被告。そのカネは東芝が営々と築いてきた最先端技術をスパイし、韓国企業に横流しすることで得られたものだ。

杉田被告は米半導体大手「サンディスク」日本法人に在職中の'08年1月から5月にかけて、提携先の企業である東芝の主力製品「フラッシュメモリー」の研究データを違法にコピーしたとされる。サンディスクは東芝とフラッシュメモリーなどの共同開発事業を行っていて、杉田被告は東芝四日市工場に勤務していた。

「杉田被告は管理職としてサンディスクに採用されたのですが、会社が期待するほどの成果を上げられなかったといいます。そのため、'07年に管理職から一般技術者に降格され、給与などの待遇が悪くなった。過去に仕事で付き合いのあったSK社の社員に不満を漏らしたところ、同社にスカウトされたそうです」(全国紙社会部記者)

自分はもっと高く評価されてしかるべきではないか—。そう考える杉田被告に対してSK社社員が、

「あなたの能力は不当に低く評価されている。うちに来ればもっと厚遇しますよ。ついては、あなたの知っている半導体の技術を教えてくれませんか」

こう囁き、杉田被告の自尊心をくすぐったことは想像に難くない。転職に先立ち、自分を「優秀な技術者」に見せかけるべく、彼は違法行為に手を染めた。

「仕事のできる技術者なら、半導体メーカーの世界でそれなりに名前が知られているはずですが、杉田被告はまったく無名。だから、技術漏洩という手段で、自分を売り込むしかなかったのでしょう。彼は権限を行使して、東芝のデータベースにアクセスし、無断コピーを繰り返した」(同前)

この研究データを手土産に、杉田被告は'08年7月にSK社に転職する。年俸はサンディスク時代の約2倍で、千数百万円の役員待遇。韓国清州市にある高級マンションをあてがわれ、同市内の工場に勤務した。

杉田被告にすれば、自分を冷遇した古巣を見返した気分だったろう。

起訴状によれば、この間、転職まもない'08年7月に東芝から盗んだデータをSK社社員にスライド上映で開示し、また'10年4月には同社社員に電子メールでデータを送付したという。

だが、杉田被告の幸福な日々はあまりに短かった。肝心の機密情報さえ手にすれば用済みとばかりに、SK社が'11年6月をもって契約を打ち切ったからだ。

不満を抱く日本人技術者の自尊心を言葉巧みにくすぐり、技術と引き換えに厚遇を保証するやり方は、韓国メーカーの常套手段だと言われる。

ソニーからサムスン電子に転職した経験のあるエンジニアが、日本からの技術流出の実情を明かす。

「杉田被告が技術者としてそれほど高いレベルの人物とは思えません。仮に自分の技術に自信があれば、不正行為をしてまで情報を持ち出す必要がないからです。SK社も彼が東芝の情報を持ち出すことができたから価値を見出しただけで、杉田被告本人の技術に対する評価はゼロでしょう。3年で契約を打ち切られているのが何よりの証拠。持ち出した情報の価値がなくなれば、それ以上、カネを払う意味がないと判断されたわけです」

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