日米首脳会談はTPPでオバマ大統領、安全保障で安倍首相がリードする

23日から25日、オバマ米大統領が訪日する。これは、貿易と安全保障の相互関連を示す外交論の教科書に出てくるような実例になるだろう。

TPP(環太平洋戦略的経済連協定)交渉が山場になっているので、それだけが日米首脳会談の問題になっているかのような新聞報道が多い。たしかに、甘利TPP担当相がアメリカに行き、フロマンUSTR(米通商代表部)代表とギリギリの3日間交渉を行ったが、農産物5項目の関税の扱いや自動車貿易の問題では、日米間で隔たりが大きく、日米首脳会談でどこまで決着できるかどうかは重要なポイントだ。実務的なオバマ大統領が2日間も滞在するということもある。

ただ、日米首脳会談は、貿易だけが議題でない。

オバマ大統領は今回、日本だけではなく、韓国、マレーシア、フィリピンの4カ国を歴訪する。オバマ大統領は昨秋、国内で財政問題を巡る与野党の激しい対立によって政府機関閉鎖を余儀なくされた。

その結果、予定していたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)首脳会合、米・ASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議、東アジアサミットへの参加、マレーシア・フィリピン訪問をすべて中止せざるを得なくなった。それらの会合で、オバマ政権の「アジア軸足」外交やTPPの推進をもくろんでいたが、米国の都合で果たせなかった。その代わりに、中国のアジアでの台頭を印象付けた。

今回のアジア歴訪は、昨年の中止の穴埋めという性格が強い。「アジア軸足」外交が本物で、安全保障でアジア諸国と米国がどのような連携をとるか、安全保障と密接な関係があるTPPをどこまで推進できるかがポイントである。

日米韓の同盟強化で中国を牽制したいオバマ政権

TPPに代表される自由貿易は、その前提として貿易国間で軍事的な摩擦がないことが前提である。また、自由貿易によって貿易が盛んになれば当然軍事的な摩擦は少なくなる。こうした意味で、TPPと安全保障は密接な関係がある。

今回のアジア歴訪は昨年の中止の穴埋めであるとしても、昨年と今年では状況が違う。一つは、国際情勢であり、クリミア問題だ。二つは、オバマ政権の米国内情勢である(これは後述する)。

ロシアはまんまとクリミアの併合に成功しつつある。これは、アジア諸国との領土問題を抱え、海洋進出の野望を隠さない中国にとって、格好の好例となる。一方、中国と接するアジア諸国は警戒感を隠さない。特に、フィリピンは、最近もスプラトリー(中国名・南沙)諸島で一触即発の状態になっている。

この点で、オバマ政権は、「アジア軸足」外交をもっと全面に打ち出して、日本などアジアの盟友に対して「同盟国」であることを打ち出さなければいけない。

その布石は、3月25日におけるオランダのハーグでの日米韓首脳会談だ。

あまり報道はされなかったが、そこで、オバマ大統領は、日韓二国間の秘密情報保護協定を促したようだ。これは、日韓両政府で2012年6月までに署名することになっていたが、反日感情に配慮した当時の李明博政権が先延ばしして、朴政権でも手つかずのままだ。一方、日本では特定秘密保護法を成立させ、当時より環境整備を前進させている。

日米韓で北朝鮮問題に対して「軍事情報保護に関する了解覚書(MOU:Memorandum of Understanding)」の締結を検討しているが、その前提として、日韓の秘密情報保護協定が急がれているわけだ。

実は、オバマ政権は、オバマ夫人を3月に中国に旅行させたくらいで、表だって中国のことをあまり牽制できない。ただし、北朝鮮を口実にして、日米韓で組むことはできる。これが間接的に中国への牽制になるということだろう。このために便利な言葉は、安倍首相が用意している「力の現状変更認めず」だ。

この言葉は、オバマ政権にとっては、クリミア問題でのロシアへの牽制にも使える。一方、尖閣を抱える安倍政権やスプラトリーを抱えるアキノ・フィリピン政権にとっては、中国への牽制になる。このように、各国が自国に都合良く使えるので、外交上の成果も出しやすい。

こうしたことから、日米首脳会談は、アジアの安全保障については、安倍首相のペースになるだろう。

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