ブルーバックス
『新幹線50年の技術史』
高速鉄道の歩みと未来
曽根 悟=著

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1964→2014 「夢の超特急」半世紀の足跡

 1964年に誕生した新幹線は、大量の高速輸送を安定に実現するために、重量オーバー対策での線路の作り直し、ダイヤの改訂など、さまざま試行錯誤を繰り返してきた。開発された技術が海外に大きな影響を及ぼした一方で、夜行列車や貨物新幹線など、実現しなかった構想もある。本書では、新幹線50年の歩みを技術中心に振り返り、整備新幹線やリニアなどの将来像を展望する。新幹線と人生を共にした筆者による渾身作。


はじめに

 1964年に世界初の高速鉄道として日本に誕生した新幹線が,2014年で無事に50年を迎えた。新幹線の技術的ルーツが初めて世間に向けて発表されたのは、「超特急列車 東京-大阪間3時間への可能性」という1957年に開かれた講演会のことである。筆者は当時高校生であったが、この講演会に出席した。以来,新幹線とのお付き合いは57年になる。

 この間,急速にさまざまな劣化が進む日本国有鉄道という組織の中で,新幹線は営業面でも技術面でも唯一の明るい部門であった。国鉄末期には停滞した時期もあったが、1987年に国鉄の分割・民営化が断行されて,新生JRによって再び活気を取り戻した。

 敗戦国日本,というイメージが残っていた極東の小国が自力で世界一の高速鉄道を造り,営業的にも大成功を納めたことに,鉄道先進国を自負していたヨーロッパ諸国は急追の動きを見せた。1981年にはフランスが新幹線を参考にして、また他山の石としてTGVというシステムを作り上げ、明確に世界一の座に着いた。

 さらにその後,鉄道技術では後進国とのイメージが強かったスペインや中国によって,世界の高速鉄道の地図は全く塗り替えられることになり,今では,スペインはヨーロッパ最大の高速鉄道網を持ち,中国は世界最大の高速鉄道保有国になった。そのかげで,元祖新幹線には時代遅れや色あせたイメージさえつきまとうようになってきた。

 一方で,災害大国でもある日本で,新幹線は奇跡ともいえるような安全実績を更新中であり,なお日本の新幹線には世界に貢献できる優れた技術も少なくない。

 近年、世界的に鉄道が元気な中で,日本だけが停滞している。それは大変残念であるが,日本の優れた技術と,諸外国に見られる積極的な発想とを組み合わせれば,国の内外で鉄道の社会的役割が一層高められる。

 筆者の鉄道技術人生の主役であり続けた高速鉄道への熱い想いの一端が本書によって伝えられれば幸いである。


目次
第1章 高速鉄道の元祖
第2章 新幹線の建設と開業
第3章 JR発足と速度記録への挑戦
第4章 列車ダイヤとサービスの変遷
第5章 リニア中央新幹線の建設
第6章 世界的に見た新幹線の技術
第7章 新幹線の近未来像
 

著者  曽根 悟(そね・さとる) 
東京大学名誉教授。一九三九年東京都生まれ、一九六二年東京大学工学部電気工学科卒、東京大学助教授、東京大学教授、工学院大学教授を経て、現在、同大学特任教授,同大学の鉄道講座を主宰。二〇〇五年から八年間、JR西日本の社外取締役を務める。著書に「新しい鉄道システム -交通問題解決への新技術-」(オーム社)、「電気鉄道ハンドブック(共監・共著)」(コロナ社)など。内外の鉄道雑誌への寄稿多数。
『新幹線50年の技術史』
高速鉄道の歩みと未来

著者:曽根 悟

発行年月日:2014/4/20
ページ数:240
シリーズ通巻番号:B1863

定価:本体 900円(税別)
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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)