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連載「買わせる発想」【第1回】クーポン券を配っても、ボウリング場に若者は来ない
岡田庄生(博報堂コンサルタント)
モノやサービスがあふれすぎて差がわかりにくい時代に、相手の心を動かし自分の商品を「買わせる」にはどうすればよいのか。お客様を「消費者」ではなく「生活者」と見る発想の転換法を一冊の本にまとめた博報堂の若手敏腕コンサルタントが「買わせる」秘密を、短期集中連載で明かします

私は博報堂という広告会社でコンサルタントをしています。広告会社にコンサルタントなんているの? と思う方も多いかもしれません。40人程度の小さな部署ですが、商品開発やブランド作り、事業計画や企業ビジョンなど、広告になる前のマーケティング全般のよろず悩み相談所といった仕事をしています。

『買わせる発想 相手の心を動かす3つの習慣』 岡田庄生著  価格:1,080円(税込)

なぜ広告会社にそのような仕事の相談が来るのか。一言で言えば、「お客様の視点」を求めているからです。

広告会社は昔から企業の代わりに、どうやったらお客様に興味を持ってもらえるか、買ってもらえるか、をずっと考えてきました。

そして今、モノが溢れすぎて売れなくなった時代に、お客様の声にちゃんと耳を傾けようとする会社が増えています。

とはいえ、道端に歩いている主婦やサラリーマンを急に会議室に呼んできて、「どんな商品が欲しい?」と聞いてみるわけにもいきません。そこで、お客様の気持ちも、企業の気持ちも、どちらもある程度分かっている広告会社にお声がかかるのです。

「生活を豊かにしたい」と思う人は絶対にいなくならない

ところで、お客様について考える時に、2種類の捉え方があります。「消費者」と見るか、「生活者」と見るか、です。

生活者という言葉は、あまり聞きなれないかもしれませんが、例えば花王が「消費者相談センター」の名前を「生活者コミュニケーションセンター」に変更したり、最近少しずつ使われるようになっています。実はこの「生活者」、博報堂が約30年前にビジネスの世界で初めて使いだしたそうです。

約30年前ですので、バブルの頃でしょうか。 商品を出せば売れる時代、あらゆる企業がお客様の事を「消費者」と見ていました。

例えば、ビール会社の営業マンであれば、人を見れば「あの人は、ビールを飲むに違いない。いかにわが社の商品を消費させようか」と考えるし、車のディーラーであれば、「あの人は、車が欲しいに違いない。いかにわが社の商品を買わせようか」と考えていました。

つまり、人を見れば「わが社の商品を消費する者だ」と考え、当時少数派だったビールを飲まない人、車に乗らない人は視界に入っていなかったのです。

しかし、よく考えてみれば、人はビールを買うために生まれたわけでも、車に乗るために生まれたわけでもありません。自分の生活をより豊かにするために、たまたまその商品が役に立つから買っているんだ。そう考えるのが「生活者」の発想です。

例えば、週末に子どもたちを連れてキャンプやバーベーキューで思い出を作る、そんな生活がしたいな、と人は思います。そのためには、みんなが乗れるちょっと大きめな車が欲しいなと思って車を選んでいるのだ、という考え方です。

30年経った今や、ビールや車を買わない若者も増えてきているかもしれません。しかし、「生活を豊かにしたい」と思う人は絶対にいなくなりません。その人の生活を豊かにするために、わが社の商品はどんなお役にたてるだろうか。

それが、博報堂が30年前に言いだした「生活者」という言葉に込めた想いだそうです。(当時は、「そんな事言ったって、作れば売れるし」とあまり相手にされずに、言葉もそれほど広がらなかったようですが・・・。)

今となっては、この考え方は当たり前かもしれません。ですが、意外とまだ出来ていない会社も多いのではないでしょうか。とあるボウリング場を例にとってご説明します。

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