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VOL.1「ウクライナ問題が浮き彫りにした「新冷戦」という構造」はこちら
VOL.2「アメリカの力が衰え、戦後の世界秩序が液状化しはじめた」はこちら

集団的自衛権の問題をどう考えるのか

長谷川: さて、集団的自衛権をどのように考えるのか、ということで、まず長島さんのご意見、考え方をお聞かせください。


長島: 憲法論はちょっと脇において、これまで概観してきたような国際情勢を念頭に置けば、よく言われることですが、やっぱり日本が「自分たちの国は自分たちで守る」というような、より自律性の高い安全保障の力というものを持っていかなければいけない、これが一つ。

そのうえで、日本一国ですべてを仕切る、中国との関係、北朝鮮の脅威、それらのすべを一国で仕切るのは難しいわけで、しかも国際情勢も年々複雑になっていて、一国だけで物事を全部律するということは難しいわけですから、当然ながら同盟国であるアメリカのバックアップが必要です。

そうであれば、縷々申しあげてきたような状況で、アメリカの力というものが相対的に衰えているとすれば、アメリカはこれまでかなり無理をしてアジア・太平洋に彼らのプレゼンスを展開してきたけれども、だんだん維持するのが難しくなってきているわけですよ。「リバランス政策」も、率直に言って未だ「口先レベル」に止まっています。

そこで日本が責任を果たすことによって、そのアメリカに何とか形だけでもいいからアジア・太平洋の平和と安定にコミットし続けられるような状況を作って行かなければならない。そういう現状だと私は思っていて、そのためには当然個別的自衛権ももちろんだけれども、集団的自衛権、つまりアメリカとの同盟関係においてこのアジア・太平洋地域の平和と安定を、日本が積極的な役割を果たすなかで確立していくということが、最低限やらなければならない責務です。

「憲法守って国滅ぶ」ではいけない

長島: ですから、そういう観点から憲法論というものを展開しないと、今まで政府解釈が積み上げられてきましたので、それに整合性のある解釈をしないといけませんというのは、憲法論ではそれでいいのかもしれませんけれども、じゃあ、まさに「憲法守って国滅ぶでいいのか」という話になります。

憲法がきっちり守られました、めでたく内閣法制局の解釈は維持されました、しかし、日本国民の生命、財産、主権、領土、これがすべて危機に瀕しました、というようなことでは政治の責任は果たせないと私は思っています。今申しあげたようなことが、憲法解釈の幅の中でそれほど逸脱したものでないような形で実現すればいいわけです。

たしかにこれまで積み重ねた解釈をすべてご破算にすることは、政治の連続性から考えてもなかなか国民の理解は得られないと思いますから、そこは様々な理論武装をして、なるべく現状のリアリズム、外交安全保障のリアリズムに立脚したリアルな対応が可能な憲法解釈の変更などが必要ですね。

そんなに集団的自衛権を行使したいなら憲法改正すればいいじゃないか、という意見もよく聞きますが、私はハードルが高いだけでなく、戦後平和主義の基本を憲法改正によって改変することによる国際的なハレーションについては甘く見ない方がいいと思っています。むしろ、憲法9条をめぐる平和主義は堅持した上で、直面している安全保障上の課題に応えて行けばいいと考えています。憲法は百三カ条の抽象的な規定でできているんですから、解釈の幅は自ずとあります。ですから、許される解釈の幅で、現実的な対応をとれるように手当をするというのは、これはもう野党も与党もないことだと率直に思っています。

外交・安全保障政策は野党再建のアキレス腱

長谷川: 私もまったく同感で、一言でわかるように私がこの頃使っている言葉で言えば「アメリカをつなぎとめる」ということが必要だろうと思うんですね。そこでぜひお聞きしたいのは、民主党のことなんです。民主党のなかには、長島さんのようなお考えの方もいらっしゃるし、そうでない方もいらっしゃるわけで、これから6月に向けて議論をするということなんですが、民主党はたとえば長島さんのようなお考えでまとまるんでしょうか?


長島: 私は今、集団的自衛権をはじめとする党の方針を取りまとめる安全保障総合調査会の幹事長を務めているのですが、当面は党の見解をまとめなければいけないということで、毎週のように会合をやっていますけれども、正直言ってなかなか難しいです。

たしかに、私は民主党所属の国会議員として、憲法をめぐる党論を一つの方向へ収斂させて行く責任があります。ただし、自民党に対抗できる力を野党がもつためには、今ばらばらになっている野党勢力を束ねて行く作業も必要です。そのための政策的な共通基盤づくりにも責任を持って取り組んで行く覚悟です。その意味では、今の野党のアキレス腱は外交・安全保障分野だと思っています。率直に言って、共産党や社民党などとは根本的に考え方は異なりますが、民主党の中にはそれらの要素を引き摺った方々もいる。ですから民主党のなかで見解をまとめ上げるのは難しいです。もちろん諦めているわけではありませんが。

あくまで党内論議の修練に向けた努力は続けつつ、その上で、私は、外交・安全保障で現実的な政策判断を共有できそうな同志を募って、維新の会、結の党、みんなの党と民主党の保守系議員とともに、勉強会を発足させました。そこで、アキレス腱といわれる野党の外交・安全保障政策の共通の基盤を作っていこうじゃないか、と。やがては野党を再編し、自民党に対抗する現実的な政権の受け皿をつくっていかねばならないのだから、と。

そういうなかで今議論をしていると、けっこう着地点は見えてきています。これは鶏が先か卵が先かみたいな話ですが、三党ないし四党の野党のなかでキチンとした基盤を作って民主党の党内論議に影響を与えるのか、民主党がより現実的な政策をまとめ上げてこの四党のリーダーとして立っていくのか、と。これは僕はどちらの道でもいいと思っています。だけど、そうしない限り政権への道筋はなかなか見えてきません。

つまり、「安倍さんが右に行くから私たちは左に行く」というような、そういう55年体制の議論を引きずっているようなことを言っていても、それは何年経っても政権にたどり着くことはないし、今の現実的な国際情勢を見たときに、憲法はキッチリ守りました、解釈も今までの通りです、でも、安全保障政策は破綻しました、そういうのは許されないことだと思っていますので、私はどこかで見極めるべきだと思っています。・・・・・・この続きは現代ビジネスブレイブイノベーションマガジンVol072(2014年4月9日配信)に収録しています。

長島昭久(ながしま・あきひさ)---1962年神奈川県横浜市出身。衆議院議員。民主党副幹事長。慶應義塾大学大学院修了、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)修了。前防衛副大臣、元総理大臣補佐官(外交及び安全保障担当)。衆議院安全保障委員会筆頭理事。
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