官々愕々 成長戦略は「武器・原発・外国人」
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三度目の正直という言葉はあるが、3回続けて失敗した後、四度目の正直を期待してよいのかどうか。ジャンプに挑戦する葛西紀明選手の話だったら、皆信じるが、安倍晋三総理の話だと言ったらどうだろう。

安倍総理の3度の挑戦とは何か。

アベノミクスの第一の矢である金融緩和で株高と円安が進み、一気に景気浮揚への期待が高まったのが昨年の初め。第二の矢である機動的財政出動、すなわち、借金頼みの公共事業バラマキによって、建設分野ではバブルが起きるほどの好況につなげた。しかし、この2本の矢には限界がある。そこでアベノミクス第三の矢、成長戦略に期待が集まった。

成長戦略は、効果が出るまでに時間がかかる。本来は第一の矢として最初に放つべきだったが、安倍総理最初のチャレンジは政権発足後半年の昨年6月。鳴り物入りで発表したが中身がなくて、発表の最中に株価大暴落という大失態となった。安倍総理の成長戦略への期待がガタ落ちになった瞬間だ。

慌てた官邸は、「実は、この成長戦略は本物ではない、本物は秋に出す」と言い訳し、秋の臨時国会は、「成長戦略国会」と銘打った。しかし、2度目の挑戦も何も出てこないまま終わってしまった。

今年の通常国会は、安倍政権によって「好循環実現国会」と名づけられた。「『成長戦略』が不十分なわけではない。成長への好循環につなげるための最後の一押しが足りないだけだ。それを今国会でやる」という言い訳のための命名である。

しかし、'13年度補正と'14年度本予算は、ただのバラマキばかり。3度目の挑戦の目玉となる「国家戦略特区」も中途半端なもので終わった。これで、日本の成長率が上がるという識者はいない。

第三の矢に期待できなければ、第一、第二の矢しかない。しかし、おカネはジャブジャブにして、国の借金をどんどん増やしても、人手不足で公共事業の消化もままならない。企業も、投資する資金はあっても付加価値を高めるイノベーションがないので、結局、コストカットへと再び向かう。公共事業のためにも民間企業のためにも安い労働力が必要ということになり、建設分野への外国人労働者活用の拡大が決まった。

人々の生活の質を高めるためには、高い給料をもらえる職場の創出が最重要だ。その意味では、付加価値の低い分野で、人手不足という理由だけで外国人を大量流入させるのは、本筋から外れた一時しのぎでしかない。このままでは、昔のように公共事業に頼る経済に逆戻りするだけである。

そこで、対策はないのか、と考えたわけではないだろうが、ここへ来て武器輸出と原発輸出の動きが加速している。武器輸出三原則廃止で、武器輸出が原則禁止から原則解禁となったことで、水面下の動きが一気に表面化して来た。米国だけだと思ったら大間違い。英、仏、豪、印、フィリピン、ベトナム、トルコなどいたるところで企業間、政府間で武器や武器技術輸出の相談が始まっている。

原発輸出も、トルコやUAEとの原子力協定が衆議院を通過し、さらに加速されていく。

今や、日本の成長戦略の三本柱は、「武器と原発と外国人」になった感すらある。一頃三本柱と言われた、医療、農業、電力の3分野はどうなったのか。利権にまみれた自民党族議員と官僚達は、引き続き、本丸は死守するつもりだ。

「岩盤規制を打ち破るドリルの刃になる」という安倍総理の言葉。4度目の挑戦は、6月に出る成長戦略だが、「四度目の正直」を信じる気には、どうしてもなれない。

『週刊現代』2014年4月26日号より

原発の倫理学(税別価格:1400円)
話題作『原発ホワイトアウト』著者・若杉冽氏推薦! 「霞が関には古賀さんを隠れキリシタンのように慕っている官僚たちがいる。原発の裏も表も全部わかる必読書」

原発は「倫理的」に許されないエネルギーだという議論をすると、それは「感情的」あるいは「主観的」な議論であるというレッテル張りをされる傾向があります。経済論や技術論は受け入れられても倫理論は受け入れられないのが現状だと言ってよいでしょう。しかし、倫理の問題は、経済や技術の分野でも非常に重要な問題です。二人の元総理(小泉氏と細川氏)が期せずして脱原発を「人の生き方の問題」「倫理の問題」として語り始めたことは、極めて重要な意味があります。私が小泉氏や細川氏に期待するのは、大きな哲学、「脱原発の倫理観」を国民に提示し、国民的大議論を巻き起こすことです。議論の末、国民の大多数が新しい日本の生き方、「脱原発と再生可能エネルギーで、自然とともに生きる国日本」を目指すという共通の目標に到達すれば、その時初めて、脱原発が可能になるのだと思います。――<「はじめに」より抜粋>

※本書は2013年5月に先行発売した電子書籍『原発の倫理学 古賀茂明の論考』の内容を大幅にアップデートした上で再編集したものです。