向田麻衣Lalitpur社長
「途上国で苦しむ女性の、心を救い、仕事をつくる」

本荘 修二
株式会社Lalitpur
代表取締役社長・向田麻衣(むかいだ・まい)さん
ツイッター https://twitter.com/maimukaida
1982年宮城県生まれ。17歳の時にネパールを訪れ、女性の識字教育のNGOに参加。慶応義塾大学在学中に、トルコで女性の支援に向けたフィールドワークを半年行う。卒業後、化粧品メーカーのマーケティング部を経て、2009年にCoffret Projectを開始し、一般社団法人Coffret Project代表理事に。現在までに約5000点の化粧品を、ネパール、トルコ、インドネシア、フィリピンに届け、約1200人の女性に化粧のワークショップを提供。2010年からネパールに集中して活動中。また、東日本大震災後、約10000点の化粧品を被災地へ届け、ワークショップを開催した。2013年2月、ネパールでの雇用創出のため株式会社Lalitpurを起業し代表取締役に就任、化粧品事業に取り組む。2012年にAVON女性年度賞、ソトコト ロハスデザイン賞 ヒト部門大賞を受賞。

これから楽しみな素敵な女性起業家の方に経営コンサルタント・多摩大学客員教授の本荘が話をうかがう本連載の第十四回目は、ネパールで人身売買の被害にあう女性の問題に取り組み、ヒマラヤ・ハーブを活かしたネパール産化粧品を製造販売する株式会社Lalitpurの向田麻衣社長の登場です。

今回はインタビュー本文に入る前に、向田さんの二つの活動について説明をしておきたい。

5年前に発足したCoffret Project(コフレ・プロジェクト)は、「女性たちが尊厳を取り戻し、自信を持って生きてゆける社会を作る」というビジョンを掲げている。ネパールでNGOに保護されている人身売買被害女性を対象に、化粧品やメイクアップのワークショップを提供するなど社会貢献活動を展開している。化粧というツールを通して、被害にあった女性達のメンタルケアを提供し、元気になってもらう。化粧体験ワークショップでは、大切に触れられ、そして自分がステキになれると感じ、自分の可能性に気づく機会を提供している。

1年前に発売された、ネパール発のナチュラル化粧品ブランドLalitpur (ラリトプール)は、ワイルドハーブや岩塩などヒマラヤ産の原料を使用。商品としての付加価値を追求するとともに、ネパールでの女性たちへの誇りある仕事の創造を図っている。

被害女性を元気にし、仕事をつくる

Coffret Projectで化粧のワークショップの形で、メンタルケア・プログラムを人身売買の被害者であるネパールの女性に提供してきました。(シュウ ウエムラ提供の)化粧ボックスを開くと、女の子たちは目をきらきらさせて恥ずかしそうに笑います。ワークショップは一度に20-30人のことが多いんですが、一日100人のこともあります。だからだから手首はずっと腱鞘炎です。

一言も話さなかった女の子がいました。私がワークショップをやっていると、日が経つにつれ少しずつ近づいてきて、やっと私の目の前に座ったんです。メイクをすると、彼女は鏡に映った自分を見つめ、私に「サンキュー」と言ってくれて、みなが驚き、私は鳥肌が立ちました。

このプログラムを3年くらい提供して、参加した彼女たちのその後を考えるようになりました。施設にとどまらなければならなかったり、もう一度売春に戻ってしまったり、仕事が無いことが大きな問題でした。心のケアと仕事を創ることの両方をやらなければと。

はじめは、現地のヘアサロンやメークアップの仕事ができるようにと準備しました。しかし、ネパールは失業率が高く、職を得るのが大変で、親や親戚のコネや紹介なども重視されます。でも、天涯孤独、学校に行ってないから読み書きや計算もできないという彼女たちには就職は難しい。

にっちもさっちも行かず、ならば私たちがビジネスを起ち上げられないだろうかと考えるようになりました。改めて調べてみるととネパールにはヒマラヤ山脈くらいしか資源がない。しかしそこにはハーブがあり、標高三千メートル以上の植物は効能が高いということがわかりました。それで最終的に基礎化粧品に行きついたんです。

よかれと思ってやっている社会貢献活動や寄付が、現地のニーズと乖離していると、しばしば言われる。向田さんは、自ら現場で強く感じたニーズに対し、ぶつかっていく姿が印象的だ。「支援で化粧?」と不思議に思う読者もいるだろうが、これは理にかなっている。人は食べ物など物質を与えるだけでは立ち直れない。セルフエスティーム(self-esteem、自尊心、自己肯定感)が不可欠だ。私も捨てたもんじゃない、自分もけっこうステキよ、という心があってこそ前に進める。特に虐げられた彼女たちには心の栄養が効くのだ。ちなみに、向田さんはクラウドファンディングで寄付を募集中だ。詳しくはこちらを。

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