中国
21世紀の日本を左右する、太平洋東アジア海域を巡る米中の確執
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先週、「ヘーゲル旋風」が、日中で吹き荒れた。結論から言えば、日米中の複雑な国際関係を体現したような「つむじ風」だった。

4月5日に、ボーイングE-4Bで横田基地に降り立ったヘーゲル国防長官について、外務相幹部は訪日前に、次のように期待感を表していた。

「オバマ政権下のワシントンへ行って、ペンタゴン(国防総省)と国務省を訪問すると、同じ国の官庁とは思えないほどだ。単純に言えば、ペンタゴンは親日で、国務省は親中。特にヘーゲル国防長官は、オバマ政権の中で唯一の親日派と言える閣僚だ。だから今回のヘーゲル国防長官の日中訪問には、非常に期待している」

実際、ヘーゲル国防長官は、安倍首相、小野寺防衛相、岸田外相との会談で、日本側からすれば「ほぼ満点」とも言える言動を披瀝した。尖閣問題が日米安保の対象であることの確認、力による現状変更への反対、集団的自衛権行使への理解、イージス艦2隻の横須賀基地への追加配備、日米同盟の一層の強化といったことだ。

そして4月7日午後、ヘーゲル国防長官は直接、青島へ飛んだ。

中国人民解放軍海軍は、青島を中心基地とした北海艦隊、寧波を中心基地とした東海艦隊、湛江を中心とした南海艦隊の3艦隊体制だが、現在最も注目されているのが青島だ。なぜなら、中国初の空母「遼寧」の拠点となっているからだ。

その「遼寧」に、ヘーゲル国防長官は、外国人初の賓客として乗り込んだのだった。

「不衝突不対抗、相互尊重、合作共嬴」

なぜ今回、中国軍は「虎の子」の空母に、アメリカの国軍責任者を搭乗させたのか。中国最大の国際ニュース紙である『環球時報(4月10日付)』は、「大国の自信」というタイトルの特集記事の中で、こう記している。

〈 われわれ中国人は古代から「国の利器は軽々と他国に見せびらかさない」という認識を持ってきた。だが数十年来、人民解放軍は、閉鎖から開放へ、不安から自信へ変わってきたのだ。

実際、アメリカ軍との交流は、今回が初めてではない。1984年8月20日、アメリカのライマン海軍司令官一行が大連の小平島でわが軍の原子力潜水艦を参観している。この時、わが軍は初めて外国人に原子力潜水艦を公開した。

2011年にはゲーツ国防長官が中国の第二砲兵部隊を参観したし、2012年にはパネッタ国防長官が北海艦隊を参観した。逆に人民解放軍幹部も訪米時に、アメリカ軍の核燃料空母や原子力潜水艦を参観している。 〉

この記事には、丸々太った色つやのいい、純白の海軍上将の軍服を身に纏った呉勝利海軍司令員が、マイクを持ってご満悦そうに、ヘーゲル国防長官に講釈を垂れている写真が掲載されている。

同日、北京へ着いたヘーゲル国防長官は、4月8日午前、中国国防部の「八一大楼」で、常万全国防部長(国防相)と米中国防相会談を行った。両国防相の主張は以下の通りだ。

常万全: 「今年は中米の国交正常化35周年にあたる記念の年だ。または『中米の新たな大国関係』を築く要となる年だ。習近平主席は常日頃、『不衝突不対抗、相互尊重、合作共嬴(互いに衝突せず、対抗せず、尊重し合い、提携しダブルウィンの関係を築く)』という14文字で、新たな大国関係の極意を述べ、両国関係の時代の特徴を明確に提示しておられる。

中米両国は一歩一歩、ぶれることなく新たな大国関係の構築に向けて推進していく。それこそが、両国の根本的で長期的な国益であり、アジア太平洋地域と世界の平和と安定に有益なものだ。

昨年来、中米関係は順調に進展してきており、双方の対話と交流をさらに強める時期に来ている。互いに相手国の核心的利益を尊重しながら、より深く、より実務的な軍事交流を進めていき、中米間の新たな軍事的関係を、健全で安定したものに発展させていくべきだ」

ヘーゲル: 「まずは先のマレーシア航空機事故の154名の中国人搭乗者に対し、哀悼の意を申し上げる。また今回、空母「遼寧」への参観を受け入れてくれて感謝する。今後さらに提携を強化し、共同で重大なチャレンジに応対していくようにしたい。

私も中国と、新たな軍事的関係を築いていきたいと願っている。積極的に提携の範囲を広げ、実のある対話を広げ、人道的な救援や海賊撃退などで協力し、互いの誤解とリスクを減らしていきたい」

常万全: 「先にアメリカ連邦議会下院が、台湾関係法案を通過させたことに、強い不満と反対の意を述べる。また、アメリカ国防総省は釣魚島(尖閣諸島)や南シナ海の問題で誤った言動を繰り返しており、これを正しく改めることを要求する。そうしてこそ地域は平和になり安定するのだ。

アメリカはこれらの問題がいかに複雑で敏感なものか、十分認識しているはずだ。だから中国の立場を尊重し、領土問題でどちらも支持しない立場、そして近寄らない立場を貫くべきであって、誤ったシグナルを送ってはならない」

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