岩瀬大輔「人間関係はギブ&テイクからギブ×10へ」
最新刊『仕事でいちばん大切な 人を好きになる力』より

しかし、「テイク」を考えず「ギブ」に徹する人は、最終的に大きな果実を得ます。

僕の盟友である株式会社ビズリーチの南壮一郎・代表取締役CEOは、あるときこんな話をしてくれました。

「人間関係は『ギブ&テイク』じゃなくって『ギブ、ギブ&ギブ』くらいのつもりでいたほうがいい。いつかきっと自分にも『ギブ』が返ってくるんだから」

つまり、直接的な「ギブ&テイク」が成立しなかったとしても、あなたの「ギブ」は他者からの「ギブ」によって補完される、ということです。

こんなふうに考えてください。見返りを求めず、無数の「ギブ」をくり返していくと、たくさんの仲間が得られます。打算や下心とは無縁の、本物の仲間たちです。

そうした人たちが、いますぐ役に立ってくれるかどうかはわかりません。即物的な「テイク」は実感できないこともあるかもしれません。

しかし、あなたが困ったとき、仕事や人生に迷っているとき、彼ら・彼女らは必ず見返りを求めない「ギブ」を与えてくれます。

たとえ助けてもらっても、その恩義を重荷に感じる必要はありません。これまでと同じように、たくさんの人に自分なりの「ギブ」をしていけばいいだけです。

心を許し合った仲間同士での「ギブ」とは、1対1で直接取り引きされるものではなく、自分の属するコミュニティの中でぐるぐると循環していく「流れ」のようなものなのだと考えましょう。与えることとは、その流れに参加することであり、なんら損をするような行為ではないのです。

愛することは、おしゃべりすること

ギブ&テイクの発想から抜け出して、ひたすら人に何かを「与える」ことだけを考えていく。

そのとき具体的に、なにを与えていけばいいのでしょうか?

特に若いうちは、これといった地位や権限もなく、紹介して喜ばれるような人脈も持っていません。自分には与えるべきものなどなにもないんだ、と思われる方もいるでしょう。でも、特別なものを与える必要はないのです。僕たちがいちばん求めていながら、同時にいちばん与え足りないもの、それは「言葉」なのだと思います。

僕がライフネット生命の社長に就任したとき、気の合う仲間たちがちょっとしたサプライズパーティーを開いてくれました。とても温かくて楽しい集まりだったのですが、特に印象深かったのは、出席者を代表して父がおこなった締めのスピーチです。

「本日はある意味、私以上に大輔をよく知る方々が集まってくださってのパーティーなので、ここでみなさんが知らない、学生時代の大輔についてお話しします」

そう切り出した父は、こんな話をしました。

高校入試の面談の席で、先生から「あなたの家庭での役割はなんですか?」と聞かれた僕は、うーんと考えて、家では特に手伝いなどしていなかったため、小さい声で「なにもありません」と答えました。そしてふと気付いたように「強いて言えば、よくしゃべるほうだと思います」と苦笑いしながら付け加えました。