原発は「重要なベースロード電源」
政府の基本計画 民主党政権の脱原発路線から大転換[エネルギー]

エネルギー基本計画」の政府原案について衆院予算委員会分科会で説明する茂木敏充経済産業相=国会内で2月26日

国の中長期的なエネルギー政策の方向性を決める「エネルギー基本計画」が、ようやくまとまった。焦点の原発に関しては「重要なベースロード電源」と位置づけて再稼働を進め、将来的にも一定規模を活用していく方針を明記した。東京電力福島第1原発の事故を契機に「2030年代に原発ゼロを目指す」とした民主党政権の脱原発路線から大きく転換することになる。

基本計画は、経済産業省の審議会「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」(会長=三村明夫・新日鉄住金相談役)が昨年12月にとりまとめた「エネルギー基本計画に対する意見」(素案)に基づいて策定された。

当初は1月中に閣議で正式決定する予定だった。しかし、素案が原発を「基盤となる重要なベース電源」と位置づけていたため、原発ゼロを公約とする公明党が反発し、自民党内からも「原発偏重」との批判がでた。さらに2月の東京都知事選を前に脱原発論議が盛り上がりを見せたことから、選挙への影響を避ける狙いもあって閣議決定が先送りされていた。

基本計画は「可能な限り原発依存度を低減させる」との目標を掲げる一方で、原子力規制委員会の規制基準に適合した原発について「再稼働を進める」と積極的に活用する姿勢を明らかにした。

さらに将来の原発規模について「安定供給、コスト低減などの観点から確保していく規模を見極める」と明記した。将来的にも原発をゼロにすることは想定していないということだ。

原発依存で新増設にも道開く

原発依存を続けるためには、新増設や建て替えが不可欠となる。ところが、民主党政権のエネルギー政策は脱原発を前提に、原発の新増設や40年を超える稼動は認めないことを原則にしていた。今回の計画はそうした原則を盛り込まず、新増設にも道を開いた形になった。

「重要なベースロード電源」という原発の位置づけも、明確さに欠ける。公明党などの反発に配慮し、素案の「基盤となる重要なベース電源」という表現をどう弱めるか、経産省の苦労の跡がしのばれる。

当初は、「重要な」という修飾語を削除する案もあった。しかし、天然ガスや石油も「重要な」と表現されていたことから、原発に限ってそれを外すと立地している自治体から批判が噴出する懸念があった。

そこでまず、「基盤となる」という表現を削った。その上で、「ベース電源」という言葉が原発の重要度を示すわけではないことを強調するため、季節や時間帯に関係なく安定的に出力できるという意味の「ベースロード電源」という専門用語に置き換えた。結局、原発が突出して優れているとも劣っているとも受け取れないような表現に収まった。

それでも、茂木敏充経産相は「基本的に(素案段階と)方向性が変わったとは認識していない」と説明している。要するに、反原発派の批判をかわすために表現を微調整したにとどまるようだ。

使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムを再び燃料として使う核燃料サイクル政策も維持される。しかし、青森県六ケ所村の再処理工場と福井県敦賀市の高速増殖原型炉もんじゅは、相次ぐトラブルと新規制基準への対応で稼働のめどが立たない。

基本計画は、素案段階で盛り込まれていたもんじゅの将来の実用化目標を削除し、高レベル放射性廃棄物の量や有害度を減らす別の研究にも使うことを強調した。これも原発に慎重な声に配慮した微調整の結果だ。

日本はすでに核爆弾数千発分に当たる44㌧のプルトニウムを保有している。それらは本来、高速炉で使うはずだったが、もんじゅが稼動せず高速炉の実用化は全く見通せないため、ウランに混ぜて普通の原発で燃やすことにした。しかし、これもどれだけ使えるかのめどは立っていない。

こうした現状で再処理を始めれば、使い道のないプルトニウムがさらに増える。そもそも核燃サイクル政策は、さまざまな原子力施設の運転を前提としている。「原発依存度を可能な限り低減させる」という基本計画の方針との矛盾は否定できない。

国内の原発などで保管されている使用済み核燃料は約1万7000㌧に達し、多くの原発で使用済み核燃料プールは満杯に近づいている。行き場のない「核のごみ」の処分は喫緊の課題だ。しかし、今回の基本計画は「国が前面に立って取り組む」という抽象論にとどまり、具体的な解決策を示していない。

一方、再生可能エネルギーに関しては、とりわけ公明党が積極的姿勢を示したことで与党内の調整が難航した。基本計画では、導入を最大限加速化していく努力目標が示されたが、具体的な道筋については踏み込み不足に終わった。

今回の基本計画には原発依存を続ける決意と、その依存度を引き下げようとする意思とが共存している。原発に依存し続けることに対して、国民だけでなく与党内にも慎重な意見が根強い。政権交代をもたらした12年末の衆院選で自民党は「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立」という公約を掲げた。それとの整合性を取ることにも苦慮した跡がうかがえる。

一方で、脱原発が多くの社会的コストを伴うことも否定できない。天然ガスなどの燃料費が高止まりしている中で全廃すれば電力料金が高騰し、安倍晋三首相が進める経済政策「アベノミクス」の足を引っ張りかねない。

原発の穴を埋めるために火力発電をたき増せば、地球温暖化への影響も心配される。海外の化石燃料への過度の依存はエネルギー安全保障の面からも問題がある。基本計画が、最適な電源構成の比率(ベストミックス)を示せなかったのは、そうした難題に解答を見いだせないからだろう。

今回の計画に肉付けし、エネルギー政策を具体化していくには、さまざまな課題の解決策を探り、国民の理解を得る必要がある。主張や利害の対立が大きい問題だけに、安倍政権の力量が問われることになる。

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