中途半端なグローバル教育に煽られて幼年期に英語を教えるよりも、しっかりとした「日本語脳」を育てるべきだ
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私は昨年度(2013年度)、政府の内閣官房からの依頼で行政事業レヴュー(以前の「行政事業仕分け」)において、「グローバル人財教育」に関する参考人を務めた。具体的には大学教育の現場においてグローバル人財教育を充実させることを名目に文部科学省があれやこれやと予算を計上してくるのに対し、民間有識者の立場から意見したのである。私はプロとして企業現場でのグローバル人財育成を行っているからだ。

その審議の場で違和感を抱いたことがあった。それは「とにかく英語を勉強させればグローバル人材になる」と文部科学省、そしてその背後にいる大学法人は信じ込んでいるということである。予算要求に関連したペーパーを見る度に「英語」「英語」そしてまた「英語」のオンパレードなのだ。

私自身、キャリア外交官として外交の最前線にいた時、通訳官を務めた経験がある。ラウ独大統領が国賓訪日した際には天皇陛下の御通訳を務める栄誉に恵まれた。それ以外にも秋篠宮殿下や森喜朗総理大臣(当時)の通訳を務めた経験を持つ。またドイツにおいてドイツ語で出版したこともあるわけだが、そうした一連の経験からいうと「外国語を学ぶ前に、まずは母国語である日本語」なのである。

つまり話す中身がしっかりと腹に落ちていないのに、上滑りの外国語をしゃべってもそれこそ「意味が無い」のだ。その意味でまだまったく自身の知見がかたまってもいない学生たちに「とにかく英語をしゃべりに留学に行って来い」と追いだす今の政府のやり方は疑問に思えて仕方が無いのだ。

行政事業レヴューに出席した後、わだかまりが続いていた私はとある人の勧めで、ある研究者の本を手にすることになった。かつては大ベストセラーをものしたにもかかわらず、今では大きく取り上げられることのないその研究者が、これまで書き記した著作を読み漁る中で、ようやくこのわだかまりを解くカギを見つけたのである。

論理も感情も左脳で一緒に処理している日本人

その研究者の名は、角田忠信という。東京医科歯科大学で長きにわたり耳鼻咽喉科の研究を続け、現在は名誉教授である人物だ。

1970年代に角田忠信氏は偶然にも「とんでもない発見」をした。聴覚実験をしていると日本人の被験者が特異な反応を示すことに気付いたのである。その結果を簡単にまとめるとこうなる。

●日本人は言語を左脳で処理している。そして論理的な作業も左脳で処理している

●これに加えて日本人は感情・情緒についても左脳で処理している。右脳で処理しているのは機械音や和楽器以外の楽器の音色、そして雑音など「無機的な音」だけである

●日本人と同じような傾向を示すのはポリネシア人だけである。それ以外の外国人は「すべて」右脳で感情・情緒、左脳で言語・論理を処理している

日本人同士で議論していると最後は「まあ良いじゃないですか、これで」となあなあになってしまう。あるいは「和を以って貴しとなす」がトップ・プライオリティとなり、最終的には和合してしまう。実はこうした現象が生じる背景には「論理も感情も左脳で一緒に処理している」という、特異な事情にあるというのである。

そこで問題はなぜこうした日本人特有の現象が生じることになるのかという点になってくる。角田忠信氏は実験に次ぐ実験の結果、ついにその原因が「日本人の肉体」ではなく、「日本語」しかもその母音にあることを突き止めたのである。つまり日本語特有の母音を子供の頃から四六時中聞いている間にこうした脳構造が出来上がってくるという。

もっと具体的に言うならば6歳から8歳までの間に、完全なる日本語環境に置かれている場合、肉体が米国人であろうと、ドイツ人であろうと、中国人であろうと、「日本語脳」になるという。すなわち先ほどいったような言動・行動をとる、いわゆる「日本人」になるのである。

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