【第8回】第三章 公共事業の重要性---大企業と中小企業格差を詰める(後編)
~「人手不足」という危機こそチャンス、
政府ができる最善の「雇用創出策」とは何か~

【第7回】はこちらをご覧ください。

迫りつつある危機

世界屈指の自然災害大国である以上、我が国では公共投資の規模を「国民の安全が守られる水準」で維持する必要がある。それにもかかわらず、97年以降の日本政府は公共投資の削減を続け、デフレを長期化させてきた。

現在、我が国は少なくとも「二つ」の大規模自然災害の危機に直面している。すなわち、首都直下地震と南海トラフ巨大地震(東海地震、東南海地震、南海地震の連動)という危機が迫りつつあるのだ。

2013年12月19日に公表された中央防災会議「首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)」によると、首都直下でマグニチュード7クラスの地震が30年以内に発生する確率は70%である(東京五輪の2020年までですら、30%近い)。実際にM7規模の首都直下地震が発生した場合、揺れによる全壊家屋は17万5000棟、建物倒壊による死者は最大で1万1000人に達する。

さらに、市街地火災が多発し、延焼した場合、建物の焼失は41万2000棟、死者も同1万6000人に及ぶ。建物倒壊と合わせて、最大2万3000人が命を落とす可能性があるという。

経済的な被害を見ると、建物等への直接的な被害が約47兆円。さらに、生産やサービスの低下がもたらす経済活動への影響による被害が約48兆円と、総計で100兆円近い経済損失が発生することになる。

しかも、東京は日本国の首都である。首都中枢機能への影響、また数百万の被災者や帰宅困難者が出ることを考えた場合、「30年以内に70%」という確率を「低い」とみることは許されない。首都東京の機能が震災で麻痺すると、日本国家の「脳みそ」がやられたのも同然となり、被災地の復旧や復興はおぼつかなくなる。

とはいえ、想定される死者数だけを見れば、南海トラフ巨大地震は首都直下型地震をはるかに上回る。昨年5月28日に公表された中央防災会議「南海トラフ巨大地震対策について(最終報告)」には、東海地方を中心に被害が発生した際に、最悪32万3000人の死者が出るという予測が掲載されている。

32万人とは津波による被害が最大になる「冬の深夜(在宅率が高い)」に大地震が発生した場合だが、それにしても衝撃的な数字だ。無論、死者以外の被害も想像を絶するものがあり、被災者は40都道県で950万人。経済的損失は220兆円超と、首都直下型地震の2倍強に達すると推定されている。

安倍政権は2013年秋の臨時国会において、国土強靭化基本法(正式名称は「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靭化基本法」)を成立させた。さらに、南海トラフ地震対策特別措置法と首都直下地震対策特別措置法についても国会を通した。

上記「国土強靭化三法」に基づき、安倍晋三内閣総理大臣は12月17日に国土強靭化推進本部の初会合を開き、国土強靭化政策大綱が決定した。大綱決定により、国土強靭化は正式に「政府の方針」となったことになる。

大綱には、国土強靭化の目標について以下の通り書かれている。

〈 いかなる災害等が発生しようとも、(1)人命の保護が最大限図られること(2)国家及び社会の重要な機能が致命的な障害を受けず維持されること(3)国民の財産及び公共施設に係る被害の最小化(4)迅速な復旧復興――を基本目標として、『強さ』と『しなやかさ』を持った安全・安心な国土・地域・経済社会の構築に向けた『国土の強靱化』(ナショナル・レジリエンス)を推進することとする。 〉

上記の目標に反対する日本国民は少ないと信じるわけだが、現実の国土強靭化への道のりは厳しいものにならざるを得ないだろう。何しろ、日本国民の多くが「巨大地震という非常事態」について、真剣に想像していない。東日本大震災を経てさえ、「自分が犠牲者になる可能性」について考慮していない国民が多数派ではないだろうか。

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