「自分を育ててくれたのは会社での仕事ではなく街だと思った」---福岡テンジン大学学長・岩永真一氏に聞く【前編】

先日、福岡の市民大学「福岡テンジン大学」の学長・岩永真一さんにお話を伺う機会がありました。福岡生まれの福岡育ちのシティボーイ(?)、福岡の街の文化や都市としての歴史についてもめちゃくちゃ詳しい方で、目からウロコのようなお話ばかり。

福岡在住の方・移住したい方はもちろん、そうでない方、要するに誰にとっても興味深いインタビューになっていると思います。どうぞお楽しみください。

最初は「ノリ」で始まった

イケダ: まずはテンジン大学の発足の経緯などについて、ざっくり聞かせてください。

岩永真一さん

岩永: 2006年にたまたま東京に行ったときに、NPO法人グリーンバードの方に「シブヤ大学というものができるんだ」という話を聞いたんですよね。

「なんだそれは!」とピンと来て、そこで「あ、じゃあぼく、テンジン大学やります」とその場のノリで発言したのがそもそもですね。実際はシブヤ大学が何かも把握していない状況でしたけど・・・(笑)

アイデア自体はしばらく暖めていたんですが、福岡市のNPOとかボランティアを扱う「市民局」が、市民と一緒に事業を作っていこうとしていたんです。そのときに「何かやることないですか?」という話が来たので「じゃあテンジン大学をやってみよう」、ということで企画書を書いたら審査も通って、2010年の9月に開校したという経緯です。

イケダ: なるほど。いきなり突っ込んだ質問ですが、これってどのように収益化しているのでしょうか?

岩永: 私は学長ですが、給料というかたちでは報酬をもらっていません。その気がまだないので、まずは組織として継続させることを意識しています。ただ、収益の部分では、企業とのコラボレーション授業が年間の半分くらいあるんです。

イケダ: なるほど、企業とコラボしているんですか!

岩永: 年間45、46本の授業のうち、半分程度は行政または企業とのコラボレーションなんです。そうしたコラボ案件を企画をして回すという部分の報酬は発生させています。テンジン大学自体は、年間350万円程度の売上ですね。

イケダ: 企業はどういったモチベーションで、「一緒に授業をやろう」ということになるんでしょうか?

岩永: 一番多いのはプロモーションやマーケティング、PR関連のニーズです。でもPR効果もそこまで高くないし、「うちは媒体じゃない」というお話はしています。

ここでは深いコミュニケーションができるので、グループインタビューのちょっと大きいバージョンとして、何かの消費者サービスを深掘りしたり、違うアプローチで商品を知る機会として使っていただきます。あとは場所のPRとしてのニーズもあって、「あそこで毎月テンジン大学の授業をやっている」というブランディングや認知向上目的で協賛している事例もありますね。

また、最近増えているのは「人材育成」です。社員の方に、授業の企画段階から関わってもらいます。そうすることで、社外のネットワークもできますし、企業としては地域と一緒にやっている、というCSR的なアピール要素もあります。

イケダ: 地域活性にもつながりますしね。

岩永: 西鉄さんとも授業をやっていますが、人材育成、CSRとして喜んでいただけているようです。

〈 西鉄グループ内横断組織「天神カワイイプロジェクト」と、福岡の街全体をキャンパスとして無料授業を行う「福岡テンジン大学」とがコラボレーションした『カワイイ学科』が開講します! 「福岡市 カワイイ区」より)〉 

行政としては、福岡市民は日本一入れ替わりが激しい街なので、20〜30代の若者は福岡市のことをあまり知らないんですよ。せいぜい「食べ物がおいしい」程度の認識で。

なので、福岡のことをある程度知ってもらう、体験してもらう、関わっていく人材をつくっていきたいということで、福岡市の中央区から受託事業を請け負ったりもしています(参考:[休日のタイムトラベラー] 江戸時代の社会人1日目 ~お役所仕事ハジメマス編~)。

福岡の歴史や建造物を知ってもらい、次に友達と来た時に案内できるような人材になってもらったり、なぜそもそも知らないのかという意見を抽出するための授業を年に数回やっています。

イケダ: なるほど、そういうかたちでマネタイズしているわけなんですね。活動内容に関して、行政や民間の委託が半分ということは、残りの半分はどういうことをやってらっしゃるのですか?

岩永: 残り半分はボランティアで自主的にやっています。ぼくがすべてを企画しているわけではなく、企画したい人がやっています。責任者になるので、対価として一律1万円を支払っています。

イケダ: 企画料1万円ですか、負担を考えると、お金目的でできる金額ではないですね。

岩永: はい。他のアルバイトをやるよりは色々なものを得られるので、そこで癖になってしまう人はやり続けますね。逆に、合わない人はそれ以降は二の足を踏んでしまいますけどね。階段を這い上がっていく人は成長していくので、そういう人材が出てきてほしいな、と思っています。

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