政治資金・不正
「誰の資金か」という観点が決定的に欠けているマスコミの「渡辺喜美氏の借入金」報道

今マスコミで、渡辺喜美・みんなの党代表の借入問題が大きく報じられている。3月27日発売の週刊新潮が報じ、その後、テレビや新聞も後追い報道している。

筆者のところにも、マスコミ関係者から事前に「週刊新潮で記事が出るが知っているか」と問い合わせがあったが、まったく知らない話だと答えた。

今回書くことも、本件についてインサイダー情報がないので、マスコミ報道と公開情報に基づくものであり、あくまでクールな法律的な議論である。結論を先に言えば、マスコミ報道は論点がぼやけており、やや乱暴である。特に、後追いしている新聞・テレビは、週刊誌に欠けている点を補うなど、もっと冷静に報道すべきだ。

ただし、実際のところはまだわからない点もあり、渡辺氏を含め関係者には説明責任が残るという点は指摘しておきたい。

本当に「猪瀬氏と同じ」なのか

報道を簡単に言えば、渡辺氏がDHC会長の吉田嘉明氏から8億円を借り入れていた。受取方法は銀行振込。吉田氏は、そのカネは選挙資金であると言い、政治資金収支報告書等への記載がないため問題、というものだ(例えば、3月26日付け朝日新聞)。

渡辺氏が記者会見で、個人の借入だと説明し、資金使途の例として「熊手」を挙げたことを揶揄する報道も多い。また、東京都の猪瀬直樹前知事が5千万円を受け取った問題で、猪瀬氏が当初「個人の借入金」と主張していたのが、最終的には「選挙のため」と認めたのと同じだとされている。

一方、渡辺氏は、吉田氏から借り入れていた事実を認めて、それは個人の借入だから報告義務はないこと、みんなの党に貸し付けたので、党の政治資金収支報告に渡辺氏からの借入と、その資金使途が記載されている、としている。また、猪瀬氏は自分の選挙資金であるが、渡辺氏は自分の選挙資金でないので、異なるという(みんなの党HP「DHC会長からの借入金についてのコメント」)。

この両者を読み比べると、筆者は、マスコミ報道に曖昧な点があるのが気になる。マスコミに登場する識者も「何のための資金だったかが重要」と口をそろえる。そして、吉田氏のメールや証言から、資金は選挙資金そのものと断定する。そうなると、政治資金規正法違反(または公職選挙法違反)になるというロジックだ。

ここで、マスコミ論調が曖昧だというのは、「何のための資金」(政治資金なのか、個人の資金なのか)という論点の他に、「誰の資金」かという観点が、政治資金規正法等では重要だが、この点に言及しているマスコミは皆無だからだ。

誰の資金か(渡辺氏か、みんなの党か)という観点から、マスコミ報道と渡辺氏の見解を比較すれば、マスコミはこの点を明確に区別していない。おそらく渡辺氏個人=みんなの党だとして、両者一体と考えているのだろう。

一方、渡辺氏の見解では、個人で借りて、みんなの党に貸し付けたので、みんなの党の選挙資金となる、というロジックだ。実際、2012年分の党政治資金収支報告書に渡辺氏からの借入2.5億円と掲載されている。渡辺氏は自分の主張を裏付けるために、カネのやりとりを資金トレースのできる銀行口座振替で行っているという。

実は、今の政治とカネを取り巻く制度は、政治資金(その一部の選挙資金)は、資金の受け入れの主体のところで収支報告書を作り、その資金使途を明らかにするという仕組みになっている。

要するに、資金の流れの最終段階の受け入れのところで収支報告書に記載されていれば、資金の流れがわかるのでいいわけだ。しかも、資金の出し手のほうには報告義務はかからず、受け手に報告義務がかかるのだ。

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