中国
連載200回到達! いま中国を地道に定点観測することの意味を考える
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今号で「北京のランダムウォーカー」の連載200回を迎えました。丸4年になります。

開始当初から2年数ヵ月は北京に住んでおり、社会主義国の中国の首都から、毎週ヒヤヒヤしながら原稿を送り続けておりました。その後は東京から発信しております。中国に関する日々の肌感覚が鈍るのは致し方ないことですが、その分、中国という巨大な底なし沼社会を、客観的かつ俯瞰的に見られるようになった気がします。

200回も縷々書き連ねながら思いますことは、中国のいまを追い続けることの重要性です。明治以降、各界の日本の先達たちが様々な立場から中国を分析し続け、いま私がその末端の片隅にいて、今後50年後、100年後にはまた目利きのいい日本の後輩たちに引き継がれていく。こうした地道な定点観測の継続性こそが、日本の将来を支えていく一助になるのだという気がします。

私は明治以降の日本人が書いた中国分析を読むのが好きで、自分が中国のいまを見る際に、大変大きな肥やしとなっています。その意味で、現代ビジネスに毎週綴っているこのささやかな文章が、21世紀後半、22世紀・・・と続く日本の中国分析家たちの肥やしに幾ばくかでもなれば、それは望外の喜びというものです。

幸いにしていまはインターネットという偉大なツールがあるため、書いた物が散逸することもなく、一瞬にして、また半永久的に蓄積されていきます。そもそもインターネットというツールがなかったら、東京から中南海の動向を分析することなど、不可能だったでしょう。

その意味では、われわれは過去の先達に較べて、大変恵まれた時代に生きているといえます。おそらく近い将来、自動翻訳技術が進歩したら、中国語を解さない日本人も、さらに裾野の広い中国分析が可能になると思います。

ともあれ、古くからこのコラムをご愛読されている方にも、たまたま今号をクリックしてみたという方にも、御礼申し上げます。昨年、この現代ビジネスで年間総閲覧数1位を獲得しましたことは、大変励みになりました。今後とも、日本とは風土もシステムも思考も異なる習近平政権のいまをお伝えし、かつ思うところを述べていきたいと考えております。引き続きご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。

竜が目覚めた時に世界が変わる

さて、今号は連載200回記念ということで、少し大まかな話を述べたいと思います。それは東アジアにおける日中の趨勢の変遷についてです。

周知のように、古代の東アジアは、文字通り「中心の国」である中国を中心とした朝貢システムの上に成り立っていました。その中国が専ら注視していたのは、自分たちから見て東の海洋部分ではなく西域の大陸部分であり、そのため東端に位置する島国の日本は、中国的制約を受けることもなく、割と自由に生きてこられました。これには、周囲を海に囲まれていて中国からの直接攻撃を受けずに済んだという地理的要因も大きかったと思います。

実際、日本は多くの文化文明を中国大陸から摂取したにもかかわらず、それはやがて「模倣」から「加工」に変わっていきました。漢字をひらがなやカタカナに変えたというのはその典型例です。そして漢方薬から朱子学まで、必要と思うものを取捨選択して採り入れてきました。

こうしたつかず離れずという日中関係が変化したのは、19世紀後半になってからのことです。カリフォルニアから清国へ蒸気船で渡るのには18日間もかかるため、ペリー提督が給油地としての役割を日本に求めたことがきっかけでした。これが明治維新につながり、明治日本は欧米列強に追いつけ追い越せと富国強兵、殖産興業の道を歩んだわけです。

ところが中国は、1840年のアヘン戦争を契機として、清帝国がヒビ割れていきました。この「上る日本」と「下る中国」の分水嶺となったのが、いまから120年前に起こった日清戦争です。

そこから日本はさらに「上がって」、中国の少なからぬ部分を占領した後に、1945年の敗戦を迎えた。そこで政治的・軍事的にはいったん崩壊しますが、経済的には再度「上がって」、1980年代のバブル経済まで続く。

中国は1949年に中華人民共和国が統一を果たし、政治的にはまとまりましたが、経済的には停滞が続きました。中国が遅ればせながら「上がり」始めるのは、1978年の鄧小平による改革開放政策が始動してからです。

1990年代以降、日本が「上がり」中国が「下がる」という、約150年間続いてきた流れが逆になりました。日本はバブル崩壊によってゆるゆると「下り」始め、中国は驚天動地のスピードで「上がり」始めた。かつてナポレオン皇帝は、「竜が目覚めた時に世界が変わる」と予言したそうですが、その通りになってきたわけです。

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そしてついに、2010年に日中のGDPの総量が逆転し、中国が世界第2位の経済大国に躍り出ました。中国は政治的・軍事的にも、国連安保理の常任理事国となり、核兵器と空母を保有し、230万という世界最大の人民解放軍を擁しています。

この結果、国家としての全体的な国力で中国が日本を上回るという、古代以来の伝統的な東アジアの姿に回帰してきました。ただ古代と違って現代は、日本が周囲を海に囲まれているからといって、中国が攻撃してこないとは限りません。げんに、隙あらば尖閣諸島を占領しようと虎視眈々と狙っているのは周知の通りです。昨年は、沖縄も中国の領土だと主張する中国人学者も出始めました。

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