古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン動画版Vol.015 「避難対策」から見え隠れする原発再稼働の危険性 ほか

1.「避難対策」から見え隠れする原発再稼働の危険性

●九州電力・川内原発が再稼働一番手となりそうな事情

現代ビジネス編集部(以下Gbiz): 「古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン」動画版、今回が第15回になります。今回から進行を務めます「現代ビジネス」の木所と申します。どうぞよろしくお願いします。古賀さん、よろしくお願いいたします。

古賀: よろしくお願いします。まず最初に原発の再稼働と、それに関連する動きについていくつかお話をしたいと思います。川内(センダイ)原発ですね。センダイと言っても東北の仙台ではなくて、鹿児島県にある九州電力の、川内と書いてセンダイと読むんですね、川内原発。これが再稼働を認められるんじゃないかということが、ちょっと前の新聞にずいぶん大きく書かれていました。

原子力規制委員会は審査中の原発の中でも一番進んでいるものについて優先的にやろうというような方針に切り替えています。いままでは並行審査ということだったんですけれども、それだといつになるかわからない。その中で、結局、九州電力の川内原発が一番進んでいるということで、この優先審査というのを決めたようです。

「進んでいる」というのはどういう意味かというと、真相は、九州電力が一番素直に規制委員会の言うことに従ってきたと、こういうことのようです。

今回の基準は、新しく規制委員会が作ったわけですけれども、これはおもに地震と津波、要するに福島第一原発の事故の大きな要因になっていることについての対応を主として見ている。基準自身がそこのところを非常に詳しく決めて、その対応について規制に合っているかどうかということをしっかり見ていこうということでやっているんです。

その基準となる地震動というのは、いままでもそれぞれの原発について、どんなに厳しく見てもこれ以上大きな地震は来ないだろうということを想定してやっていたんですが、実は、絶対来ないだろうと言っていた大きさの地震が、福島第一原発はもちろん、はるかに超えちゃったわけです。そこだけじゃなくて、中越沖のときもそうだったんですけれども、何回も想定を超える事例が最近出ていたということで、もうすべての原発について見直すべきじゃないかという声があるわけですね。

これについて規制委員会はすべてについて見直せとまでは言っていないんですけれども、それぞれ、たとえば活断層があるかないかという話、あるいは、いくつかの断層がいままでは一緒に動くことはないと言われていたものを、いや、一緒に動くこともあるんじゃないんですかとか、いくつか課題をそれぞれの原発ごとに投げかけていたんですね。

いま想定している地震よりももっと大きいものが来るということに変えた場合に、原発の設計というものを見直さざるを得なくなる可能性がある。あるいはいろんな補強工事をせざるを得なくなる。その結果、そのコストがかなり、何百億という単位になってくると、それぞれの原発、けっこうもうすでに稼働して20年、30年というのが多いですので、そうなるとあと10年しか、40年が一応限度ということなになっていますから、延長はあり得るんですけれども、あと10年で何百億円も追加工事をして元が取れるのかどうか、そういうことを考えると、追加工事はなるべく避けたいという思惑がある。だから、各電力会社はみんな横並びで見直さないと言っていたんですね。

ところが規制委員会から見ると、いや、そんなことを言っても、福島の事故のあれを見ると、いままで想定されなかった揺れだったし、あるいはその周辺の状況を見ても、この断層は動かないだろうと思っていたものが動いたり、いろんな事例がはっきりわかってきたので、やっぱり見直してもらわないと困るということで、そこのやりとりをずっとやっていました。

電力会社というのは元々いろんな意味で談合していることが多いんですね。電力料金をどうこうというそういう類の談合もあるんですが、そうじゃなくて、安全性についての談合というのもあるんですね。世界中で、IAEAを初めとして国際的に安全基準をもっと強化していこうという流れがずっとある中で、日本だけはそれをみんなで集まって無視しようという、そういう談合をやっていました。そのことについては国会の事故調査委員会でもかなり厳しく指摘をされてきたところなんですけれども、みんな揃って、いやいや、見直しませんと言っていれば何とかなるというふうに思っているんでしょうね。

ほとんどの電力会社はその見直しを拒否してきましたが、九州電力は、原発が動かないと、経営的に苦しいと言われています。自己資本比率が比較的低い会社でして、赤字がそんなに何回も続いていると経営自体が危なくなるという、やむにやまれぬ事情があって、九州電力だけが談合破りをしまして、最大の地震の規模の見直しを受け入れました。それに基づいて対策をしますということを規制委員会に申し出たんですね。

それで規制委員会から見ると、関西電力とか、いくら言っても言うことを聞かない、それに比べて九州電力というのは本当に可愛いやつだと、こういうことになりまして、九州電力の川内原発を一番先に再稼働を認めようという動きになったわけです。

そういうことなので、川内原発は、このまま行くと夏までには再稼働が認められるだろうと思います。いろいろな手続きをしていると5月いっぱいはかかるだろうなとは言われていますけれども、5月いっぱいで規制委員会が認めれば、後は規制委員会の手続きではなくて、地元の同意です。その同意の中には、地元のほうで避難対策を作るという作業も入ります。それを含めて、地元で対応が済んで、それを確認して、政府が最終的に再稼働を認めると、そういう手続きになっていくと思います。

●避難対策の安全性チェックは政府も規制委員会も責任を取らない

古賀: ところがですね、ここには非常に大きな問題がありまして、それは何かというと、避難対策というものを規制委員会がチェックしないという体制になっているんですね、日本では。つまり、安全かどうかということの審査というのは、本当は規制委員会がまとめてやらなくちゃいけないんですが、その中から避難対策が完全なのか、十分なものなのかということについては規制委員会の規制に入っていないんです。

そうなると、じゃあ、その避難対策の安全性というのは誰がチェックするのかということなんです。これは結局、政府は安全かどうかというのは規制委員会に任せているんだというふうに言って逃げているものですから、政府はその避難対策というのが安全という面で完全なものかどうかということについては責任を負わない。規制委員会も、いや、それは私たちの責任の範疇には入っていませんというふうに言っている。

そうなると、結局のところ自治体が全部決めるということになります。もちろん、自治体にいろんなアドバイスとかは規制委員会もするし、政府もすると言っていますけれども。そうは言っても、最後決めるのは自治体であると。

そうすると、自治体が決めた避難対策が十分なものであるかどうかという問題が出てくるわけですが。これは十分なものになる可能性は極めて低いのです。ほとんどの自治体はまずその安全の問題よりも、とにかく動かすことによっていろんなお金が国から、電力会社から入ってくるということで、いま止まっているために財政的に非常に苦しくなっているので1日も早く動かしたいという動機があります。動かさないとお金が儲からないという、そういう動機を持った人が客観的に非常に厳しく、安全対策というものの評価ができるかというと、普通に考えればできないわけですね。

本来は自治体が作ったものについて規制委員会がそれが本当に大丈夫なのかということをチェックするべきなんですけれども、それができないということです。これは日本のいまの安全規制の最大の欠陥ということになると思いますが、その問題が放置されたまま、原発が動くということが起きます。

その結果、万一事故が起きたときに、避難対策が不十分で多くの住民が被曝するというリスクが非常に高いということが言えるんじゃないかなと思います。したがって、このまま動かすのは非常に問題なんですね。いま、そもそも避難対策がまだできていないところもあるんですが、川内では一応、川内原発の周辺の自治体は避難対策というのをいまどんどん作っていると思います。

実際は、避難対策というのは原発の事故がどういう形で起きるのかということを想定しないといけないんですね。事故が起きたときに何時間でメルトダウンして、最悪の場合、それが何時間で外に放出される可能性があるのかということを考えながら。で、それはSPEEDIなどを使ったシミュレーションで、それがその後何時間ぐらいでどこまで拡散する可能性があるのかというような前提とともに避難対策を作らなくちゃいけないんですが。

古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン(2014年4月4日配信)より