拡大の一途をたどる富の格差

『現代ビジネスブレイブ グローバルマガジン』---「ニューヨークタイムズ・セレクション」より

富は平均化されるという説は間違い

21世紀の資本論』著:トマ・ピケティAmazonはこちら

これからの数年、あるいは数十年にわたり格差が拡大し続けるとしたら、(世界は)どうなるだろうか。たとえば、上位1%の富裕層の所得が、現在の国家の収入の5分の1から4分の1になったとしたら、あるいは半分になったとしたらどうなるか?

パリ・スクール・オブ・エコノミクスのトマ・ピケティ(Thomas Piketty)教授の説を信じるなら、これは将来的にあり得るという程度のことでなく、その可能性はかなり高いようだ。

先ごろ米国の書店に並んだばかりのピケティ教授のエッジの効いた近著、『21世紀の資本論Capital in the Twenty-First century:未邦訳)』の中で、彼は世界経済史を斬新かつ広範な視点から分析し、市場経済の仕組みに関する多くの中核的な教義に疑問を投げかけている。

もっとも驚くべき新説は、格差の拡大傾向は最終的に安定化し、自然にやわらぐといった、長年にわたって支持されてきた自由市場資本主義の教義は間違いだという見解だ。やわらぐどころか、さらに多くの富や経済的諸力が一握りの運のいい者に経済的諸力が集中し、かなりの長期間にわたって維持されるのがほぼ確実だと言う。

格差拡大の流れは政治的措置でも変えられない

所得格差は「われわれの時代を決定づける課題である」と主張するオバマ大統領のような政治リーダーが本腰で取り組めば、その傾向は減速し、もしかしたら流れを変えることができるかもしれない。

ピケティ教授は「政治的措置によって、この流れを変えることは可能だ」と私に語った。しかし教授は、これまでの歴史を振り返ると「普通選挙権と民主的制度は、システムを反作用させるのに充分ではなかった」とし、政治的措置が実際に流れを変えるという希望はあまり持てないと付け加えた。

容赦なく拡大する格差に関する教授の説明は、おそらく、今日世界がどう動いているかについて多くのアメリカ人がもっている直感的な理解と一致しているのではないだろうか。

しかし、20世紀後半に主流となり、今日なお幅を利かせている経済通説に対抗するのは容易なことではない。この経済通説は、ベラルーシ出身のアメリカ人経済学者サイモン・クズネッツが冷戦初期に構想したものだ。

クズネッツは所得申告書の納税データを丹念に整理し、米国で初めて所得税が導入された1913年から第二次世界大戦直後の1948年までの間の上位10%のアメリカ人富裕層の所得が、国家収入に占める割合は、半分弱から約3分の1へと大きく減少したと推定している。