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大特集病気はクスリで作られる!特効薬の販売で、「うつ病」患者が2倍に増えた

週刊現代 プロフィール

昨春には、大手製薬会社ノバルティスファーマの社員が、大学などの研究機関と意を通じ、自社の高血圧症治療薬「ディオバン」の臨床研究結果に手を加えていたことが発覚。医学界を揺るがす大スキャンダルとなった。そればかりか、彼らはカネにものをいわせて、著名な医師がディオバンを褒め称える「提灯記事」を医学雑誌などに掲載しキャンペーンを張っていたのだ。

だが、これは氷山の一角にすぎない。貪欲な製薬会社が生み出した「メガ・マーケット」の代表格が、いまや国内だけで1200億円を超える「抗うつ薬」市場である。精神科医で、ノンフィクション作家の野田正彰氏が言う。

「抗うつ薬の市場を作り上げたのは、もちろん製薬会社です。彼らがスポンサーとなって、オピニオンリーダーとなるような医師に情報発信させ、マスコミを動かすという構造ができている。10年ほど前、一般の雑誌までがこぞってうつ病の大特集を組んだことを、覚えている方も多いでしょう。

'80年代以降、製薬業界の寡占化・独占化が進むとともに、こうした傾向が強まりました。今ではファイザー、イーライリリー、グラクソ・スミスクライン、ヤンセンファーマなどの数社が世界を牛耳っていますが、業界1位のファイザーの年間売上高は約5兆8000億円ですから、ちょっとした国家予算並みです」

日本で抗うつ薬市場を急拡大させたのは、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の「パキシル」を開発したグラクソ・スミスクライン社であると目されている。パキシルは、日本では'00年に「うつの特効薬」という触れ込みで発売された。

'99年まで、日本のうつ病患者はおよそ43万人で横ばいだった。しかし、パキシルの登場を境に患者数はぐんぐん増加。3年後の'02年には一気に70万人を突破し、'05年に当初の2倍以上となる92万人に達した。これと並行して、抗うつ剤の売り上げは10年あまりで5倍以上に増えている(詳しくは5ページ掲載のグラフを参照)。

「この不自然な患者数の増加は、日本だけで起きているものではありません。アメリカ本国、イギリス、北欧、最近では南米や中国でも、抗うつ薬の発売をきっかけとしてうつ病患者が激増しています。

特に中国では、'12年の1年間だけで抗うつ薬の売り上げが22・6%も伸びました。中国もまもなく、年間1000億円規模の『メガ・マーケット』になると見込まれています」(前出・ウォッターズ氏)

製薬会社は具体的に、どのような戦略で「患者を増やす」のだろうか。筑波大学教授で精神科医の斎藤環氏はこう語る。

「『疾病喧伝』という言葉があります。日本では'99年のSSRI発売から展開された『うつは心の風邪』キャンペーンがその代表格で、これで精神科受診の敷居がぐっと下がりました。

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