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まさか、呼び方が変わるだけじゃないよね ユニクロがパート・アルバイト1万6000人を「正社員化」それって、いいことなの?
柳井正氏曰く、「ひとりずつが夢を実現する会社にしていきます」〔PHOTO〕gettyimages

一生の生活を保障するため、パート・アルバイトを正社員にする。ユニクロの柳井氏が突如としてぶちあげた、新経営方針。おいしい話には大抵、ウラがあると云われるが—。

「ブラック企業」と呼ばれて

「商売の仕組みを百八十度変えようと思います。(現状の店舗運営では)パートやアルバイトが主ですが、今後は彼らを正社員にしていきます。一生を託せる会社、成長していける環境をつくります。販売員全員を店長、あるいは店長代行ができる人に変えていく」

衣料専門店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング(以下、FR社)の代表取締役会長兼社長・柳井正氏が、国内外に勤める店長や幹部たち約4100人を集めて、1時間ほど大演説をぶったのは3月中旬のこと。

「店長」だけに重責を負わせる自らの戦略を「一番大きな失敗」と率直に認め、今後は店舗で働く販売員ひとりひとりに責任ある仕事をしてもらうと、経営方針の大転換を発表したのだ。

そして、国内のユニクロ店舗で働くパート・アルバイトのうち、半分強に当たる1万6000人を正社員にする方針を固め、数年のうちに移行を進めていくという。この正社員は働く店や地域が限られた「地域限定正社員」であり、転勤はなく、勤務時間が短くてもよい点で、厳密な意味での正社員とは異なる。

ユニクロ=FR社のような日本を代表する企業が、これほど大規模な方針転換をするインパクトは大きい。非正規社員の正社員化は、安倍政権の方針でもある。だが、この「正社員化」は諸手を挙げて歓迎すべきなのか。果たしてそれで、日本全体が抱える雇用構造の問題を解決できるのだろうか—。

「正社員化は、人材確保の狙いが大きいです。ユニクロのようにいくら知名度があっても、地域によっては人手が不足する場合もある。そんな地域で、『パート募集』ではなく、『正社員募集』と掲げれば、イメージがよいので、人が集まりやすくなります」(社会保険労務士の庄司英尚氏)

契約社員を正社員に「格上げ」することはすでに、名だたる大手企業が次々と始めている。

たとえば日本郵政は4月から、契約社員4700人を「新一般職」の名称で正社員に登用する。ただし、FR社と同じく、勤務地を限定し、子育てや介護と両立しやすくするという名目で地域限定正社員である。

ちなみに、スターバックスコーヒージャパンも4月から、契約社員の約800人ほぼすべてを正社員とするほか、三越伊勢丹ホールディングスやそごう・西武、西友などでも契約社員の正社員化を進めている。

厚生労働省によると、限定正社員制度を採り入れている企業(正社員300人以上)は、51・9%に及ぶ。

限定正社員制度とはいわば国家的プロジェクト。安倍政権は働き手の4割にのぼる非正規社員の広がりを抑えるために、制度の普及を目指しているという。

今回のユニクロの「改革」は、働く人に安心感を与えるというスローガンとは別に、限定正社員制度の導入を進めたい政府へ向けての大々的アピールという側面が強いと見られている。

「かつて、雇用が多様化していた時代には、正社員は正社員とワンパターンに決める一方、非正規の部分で多様な雇用形態をつくっており、どうしても雇用の不安定さや待遇の不公平が出ていました。ところが最近は、正社員自体を多様化していこうという動きが主流です。

ユニクロの正社員化は、ある意味、国の政策を真正面から受け止めて実行しようとしていると思います。

さらに言うと、ユニクロはこれまで『ブラック企業』というレッテルを貼られてきました。今回、正社員の働き方を多様化するという正攻法で、それを払拭しようとしているのではないでしょうか」(労働政策研究・研修機構研究員の濱口桂一郎氏)

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