官々愕々 渡辺・猪瀬問題と「マイナンバー」

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猪瀬直樹前東京都知事に続いて、渡辺喜美みんなの党代表の政治資金疑惑が大きく報じられ、国民の関心が高まっている。

二つの事件は類似性が高く、猪瀬氏5000万円、渡辺氏8億円だから、渡辺氏はさらに罪が重いという論調も多い。一方、猪瀬氏は資金のやり取りを現ナマで行い、貸金庫に隠していたのに対して、渡辺氏は銀行口座振込みで行っている点で大きな相違がある。少なくとも、資金をもらっていたか否かは争う余地がないし、いつそのカネを引き出したかも通帳を見れば一目瞭然である。

ただし、その先、何に使ったかはわからない。資金使途を聞かれて、大きな熊手と答えられる仕組みなのである。

過去の闇資金疑惑で立件されたケースでは、銀行口座は使わず、現ナマを裏で動かすのが普通だった。やましいカネだから、隠す。逆に言えば、隠せるから悪いことができる。では、隠すことができない仕組みは作れないのだろうか。

この関連で非常に重要な議論が政府税制調査会で行われている。「マイナンバー」制度に関する議論だ。2016年から、我々国民一人一人に識別番号がつけられる。

この制度構築のためには1000億円単位の巨額の費用がかかり、維持更新のために永遠にITゼネコンにカネが落ち続ける。これは総務省の大きな利権となり、関連団体への天下りを助長する。一方、引越しの際の届出の提出資料が少なくなるなどと宣伝されているが、逆に言うと、今のところその程度のメリットしかない。さらに、国家による個人のプライバシー侵害につながるという強い批判もある。

そんな制度なら止めたほうがよさそうだが、本当はみんなが喜ぶ有効な活用法がある。それは脱税摘発、政治資金規正強化、不正診療報酬請求摘発、本当に貧しい人に限定した手厚い支援など、庶民から見れば是非やってくれという話ばかりだ。

マイナンバー活用のためには、すべての銀行口座を名寄せしてマイナンバーとリンクさせることが必要だが、コストと手間がかかるという銀行業界の反対で、政府税調では、新規開設口座だけをマイナンバーにリンクすることで妥協してしまいそうだ。

しかし、本来は、一日も早く「すべての」口座の名寄せとマイナンバーとのリンクを実現させる必要がある。その上で、一般国民に先立って、まずは政治資金収支報告、選挙活動資金収支報告、議員の資産報告をすべてマイナンバーとリンクして監視する制度を導入したらよい。政治家限定なら、「プライバシー侵害」という反対も出ないだろう。

また政治家はすべての出入金を銀行口座を通して行い、支出は原則としてクレジットカードまたは銀行口座振り替えで行うことも義務付ける。さらに、政治家の資金貸借には、契約書の作成・公表を義務付け、借り入れ金額にも数千万円程度の上限を設けるべきだ。

そうすれば、何か問題がありそうだという際には、非常に効率的に捜査ができる。

今なら、野党の議員提案が出れば、国民は支持するだろう。野党も少しは存在意義を示して欲しい。

一方、渡辺氏の件でマスコミが盛り上がっている陰で、猪瀬氏の件は略式起訴で終わり、事件の詳細が法廷で明らかにされないまま完全幕引きとなる。これまで、徳洲会マネーの全容を解明せよという世論が盛り上がるのではないかと恐れて息を潜めていた自民党などの徳洲会マネー議員は、みな生き延びる。その上、弱体野党はさらに弱体化して行く。安倍自民への順風はいつまで吹き続けるのだろうか。

『週刊現代』2014年4月12・19日号より

原発の倫理学(税別価格:1400円)
話題作『原発ホワイトアウト』著者・若杉冽氏推薦! 「霞が関には古賀さんを隠れキリシタンのように慕っている官僚たちがいる。原発の裏も表も全部わかる必読書」

原発は「倫理的」に許されないエネルギーだという議論をすると、それは「感情的」あるいは「主観的」な議論であるというレッテル張りをされる傾向があります。経済論や技術論は受け入れられても倫理論は受け入れられないのが現状だと言ってよいでしょう。しかし、倫理の問題は、経済や技術の分野でも非常に重要な問題です。二人の元総理(小泉氏と細川氏)が期せずして脱原発を「人の生き方の問題」「倫理の問題」として語り始めたことは、極めて重要な意味があります。私が小泉氏や細川氏に期待するのは、大きな哲学、「脱原発の倫理観」を国民に提示し、国民的大議論を巻き起こすことです。議論の末、国民の大多数が新しい日本の生き方、「脱原発と再生可能エネルギーで、自然とともに生きる国日本」を目指すという共通の目標に到達すれば、その時初めて、脱原発が可能になるのだと思います。――<「はじめに」より抜粋>

※本書は2013年5月に先行発売した電子書籍『原発の倫理学 古賀茂明の論考』の内容を大幅にアップデートした上で再編集したものです。
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