佐藤優のインテリジェンスレポート---「ウクライナ危機が尖閣問題、北方領土交渉に与える影響」ほか
佐藤優「インテリジェンスの教室」Vol033 インテリジェンス・レポートより

はじめに

24日に沖縄県那覇市で行われたシンポジウムに参加しました。ウクライナ関係の原稿に追われているために、今回はシンポジウムに出席した時間以外は、ホテルの部屋でずっと原稿を書いていました。

ウクライナ情勢が、沖縄に与える影響についても気になります。3月22日の「琉球新報」に以下の寄稿をしました。

<「佐藤優のウチナー評論(第321回):中露連携の危険性/沖縄への脅威増大も」

16日、ウクライナのクリミア自治共和国で行われた住民投票の投票率は82%、投票者の96%がクリミアのロシアとの統合に賛成票を投じた(クリミア当局発表)。「自警団」という名での国籍不明軍(実態はロシア軍)が、クリミアを実効支配している状況で行われた住民投票の結果を国際社会は認めない。しかし、ロシアは国際世論の反発を無視して、18日、クリミアのロシア編入を決定した。この日の演説で、ロシアのプーチン大統領は、「ロシアは、国際関係の自立した、積極的な参加者だ。他の諸国と同様にロシアには、考慮せねばならず、尊重しなくてはならない国益がある」と述べた。「考慮せねばならず、尊重しなくてはならない国益」のためには、近隣諸国の領土を併合しても構わないというのは、典型的な帝国主義者の発想だ。

プーチン大統領は、ロシアのクリミア編入に対する反発は一時的で、最終的に国際社会は編入を認めることを余儀なくされると読んでいるのであろう。その理由は大きく分けて2つある。

第1は、クリミアの現状と歴史的経緯だ。クリミア住民の大多数が、ロシア語を常用する人々で、ロシアへの編入を望んでいる。ロシア軍が展開せず、完全に自由な環境で住民投票が行われてもロシア編入が可決された。もっともウクライナ新政権もそのことはわかっているので、力を行使してでも住民投票の実施を阻止したであろう。また、クリミアは何度も戦場になり、最終的にロシア帝国が獲得した経緯があり、歴史的にウクライナよりもロシアとの結びつきの方が強い。

第2は、現下の国際環境だ。ウクライナには、ロシアによるクリミア編入を覆す軍事力がない。EU(欧州連合)の大多数はエネルギーをロシア産天然ガスに依存しているので、本格的な対露経済制裁に踏み込むことができない。米国にもクリミア問題でウクライナを軍事的に支援する余裕がない。

クリミア危機をきっかけに国際社会は帝国主義的傾向を一層強めた。今後、ウクライナの東部、南部に対する影響をめぐって、ロシアと欧米諸国の間で激しい外交的駆け引きが行われるであろう。米国、EU、日本が、極端な対露強硬策を取ると、ロシアは中国に接近する。この場合、沖縄にとっての脅威が増大する。中国が、ロシアの外交的支援を得て、軍事力によって尖閣諸島を奪取する危険が生じるからだ。シリア、イラン、アフガニスタンに加えウクライナでの紛争に忙殺される米国が、それに中国と対峙する三正面作戦を取ることはできない。

中国が、尖閣諸島を力で占拠するような事態になれば、自衛隊が出動し、日中間の武力衝突に発展するのは必至だ。そして、沖縄は要塞化される。東京の政治エリート(国会議員、官僚)だけでなく、世論も沖縄を「国防の島」に純化することを支持する。このような事態が生じないようにするため、ロシアを中国に接近させないようにする外交が重要になる。>・・・・・・

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