現代新書

人生をリセットし、
人生を楽しむキーワードがデジタル・ワビサビ

『デジタル・ワビサビのすすめ』著者・たくき よしみつインタビュー(前篇)
たくき よしみつ

 これは僕だけじゃなくて、阿武隈から出て行った友人たちみんなが共通して持っている認識だと思いますが、家や土地を失ったとか、環境を汚されたといった喪失感、理不尽さ以上に、日本の社会、自分も含めて、この国を構成している人間社会に対しての失望感がものすごく大きかったんですよね。

「避難ごっこはもう終わりだ」

「こんな馬鹿な国に生まれちまったんだから、どうしろこうしろと文句言ったところで始まらない。自分で前を向いていくしかない」

 ……これは実際に阿武隈を去って行った友人たちの口から出た言葉です。分かりますかね、この気持ち。

 そして僕自身、「正論」を訴え続けることにほとほと疲れてしまったんですね。

──なんだか重い話になってきましたが……。

たくき:あ、すみません。もうちょっと待ってくださいね。今、話をつなげますから。

 でまあ、物書きとしての自分は、これから何をすべきなのだろう、と。

 世の中のダメさ加減や不条理に腹を立てたりがっかりしたりするだけではとても残りの人生を生き抜ける気がしなくなりました。社会を相手にするのではなく、個というか、自分の心を見据えて、自分がしっかり、楽しく生き抜くことを考え、実行していくしかないな、という思いが強くなっていったわけです。

 日光に移住して、最初はもやもやした気持ちがなかなか晴れなかったんですが、新しく地域の人たちと触れ合い、一緒にジャズのセッションをしたり、ご近所さんに助けてもらって新生活の場を整えたりしていくうちに、自分の持ち場、やるべきことが見えてきた感じがします。つまり、この本は自分を鼓舞するために書いたとも言えますね。

──デジタル・ワビサビが人生のリセットや余生を生き抜くためのヒントになるわけですか?

新生・ブルーバックス誕生!