福島に100年続くエンターテインメントを築く【後編】---佐藤健太(NPO法人ふくしま新文化創造委員会代表理事・福島県飯舘村)

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福島に"祭り"を創る、そして揺るぎないシビックプライドを形成していく

2013年11月。佐藤氏は福島公会堂で鳴りやまない拍手を聞いていた。

自身がプロデューサーを務めるパフォーマンス集団「ロメオパラディッソ」の旗揚げ公演。昼夜2回の公演、福島市公会堂に集まった1400名が熱狂し、泣いていた。

「福島にもこんなに格好いいお兄ちゃんたちがいたんだんだ」。小さな女の子が一緒に来た母親に興奮さめやらぬ口調で話していた。「パワーもらった。なんかやりたくなりました」。若い男性が言った。怒ったような顔に真っ赤な目で、ずっと下を向き、席に座ったままの老人もいた。

「ロメオ」は、ローカル・メンズ・オーガニゼーションの略。全国各地から、福島に熱い想いを持つ男たち30名が集まった。上は47歳、下は17歳。ダンサー、役者、ミュージシャン、モデルなど経歴はさまざまだが、とは言え、大きな舞台の経験はほとんどない"素人集団"。

脚本・演出は東北を拠点に活躍する大信ペリカン氏を迎え、4ヵ月ほどの準備期間と、さらに4ヵ月の稽古とで、圧倒的な舞台をつくりあげてしまった。

それにしても、なぜ、舞台だったのか。

2013年11月に行われた「ロメオパラディッソ」の旗揚げ公演は1400人の観客を熱狂させた

「福島と言えば、これ、というものを作りたかったんです。たとえば徳島の阿波踊り、岸和田のだんじりと言ったような、地域が一つになって熱狂し、外から人もやってくる"祭り"のようなもの。震災前からの課題として、福島には桃や梨などの旬の果物以外にこれと言えるものがなかった。

だから、皆がスゲェ! と思ってくれて、若い人や子ども達が自分の生まれた県を誇りに思える。原発で不幸な"フクシマ"ではなくて、カッコいい、誰もが笑顔になれる"ふくしま"。それを育み、残すのが自分たち世代の役割だろう、と」

「除染が進まない、借金ばかりかさんでいる、これからどんどん支援も減っていく。日本全体を覆う"現実"と、自分たちが見続けなければならない"非日常"のギャップは、より深まっていくだろう。そんな状態のまま次代にバトンを渡すわけにいかない。もっと明るい何かで、福島に対するシビックプライド(誇りや愛着)を、揺るぎないものにしていく必要がある」。そう思ったのだという。

ちなみに舞台という形を選んだ背景には、とある人から学んだ、こんな印象的な話があったらしい。

「物事を動かすときには、それを重い球体にたとえるといい。球体に真っ直ぐぶつかると弾かれる。ぶつかり続けたら、いつか進むかもしれないが、かなりの力を必要とする。

しかし球体に斜めからぶつかって行ったらどうだろう。球体は、ゆっくりと、しかし比較的、小さな力で回り出し、そこに渦ができ、その渦に周囲にあるものも巻き込まれていく。このイメージが、人を巻き込み動かしてゆく一つの方法だ」

実際、ロメオパラディッソを実現したNPO法人ふくしま新文化創造委員会は、そんな"斜めからのアプローチ"により、多くの人々を巻き込んでいった。

出演者30名中11名は「ロメオ城」で共同生活を送り、生活費をバイトなどで稼ぎながら舞台を作り上げていった
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