格差・貧困
ニッポンは「新・階級社会」になった!【第1部】金持ちや高学歴の人が幸せなわけじゃない 高卒ヤンキーの「幸せ」と海外移住するエリートの「不幸」
あなたの常識がひっくり返る
安達 誠司 プロフィール

日本を捨ててまで、守りたいものがある—それが故国で稼いで得た財産だとしたら、どこかで疚しさを持ちながら生きる部分もあるだろう。だが、そんな甘い考えでは、すぐに取り残されてしまう。それが中島さんたちが暮らすスーパーエリートの世界なのだ。

不満は「ピザ屋がないこと」

「8歳の息子が通っているのは東京にある米国系のインターナショナル・スクール。学費は年間約250万円です。夏には、カリフォルニア大学の児童向け特別プログラムに参加させる予定です。子供たちが、プログラミングの楽しさやアントレプレナーシップ(起業家精神)の大切さを学んでいるあいだに、親たちはゴルフやワイナリー巡りを楽しめるんです」

せかされるような早口でそう語るのは、東京で外資系証券会社に勤める長崎治樹さん(34歳/仮名)。共働きで、妻も日系証券会社で働くため、世帯年収は3000万円を超えている。

「日本の普通の子供たちが学校のプールに通ったり、外国では役に立たない日本史の年号を暗記したりするあいだに、世界を舞台に戦うためのスキルを身につけられるのです。費用は2週間で50万円ほどかかりますが、子供の将来への投資と考えると安いものです」

外資勤めの長い長崎さんは、東大を頂点とした日本の教育制度に疑問を抱いているという。

「私自身、東大を出ましたが、あんなに勉強したのに、世界を相手にしたらなんの役にも立たないブランドが手に入っただけ……。私の会社の上層部にいる外国人たちは億単位のボーナスをもらっています。日本国内で教育を受けた人間が、その域に達するのは至難の業です。私にとっては、東大卒という学歴もコンプレックスでしかない。子供には同じ轍を踏ませたくないんです」

世間から見れば、この上なく恵まれた環境にあるはずなのに、長崎さんは自分の境遇に満足できないようだ。たしかに今でも一等地の億ションに住み、高級車を乗り回すことはできる。だが、ボーナスの時期ともなればクルーザーやプライベート・ジェットのカタログを広げている人たちが少なからずいる会社で働いていると、贅沢に関する感覚が麻痺してくるのだ。

「たしかに私は上位1%の富裕層に入るでしょう。ですが、0・1%の富裕層は文字通り『桁はずれ』なんです。仕事がら彼らと付き合うことも多いので、自分の生活に満足することはできませんね」

24時間、神経を張り詰めて、市場と戦う長崎さん。彼が安寧と満足感を手にすることはあるのだろうか。

その一方で、こうしたエリートとは対照的に、ささやかな日常に満足感を覚える人たちも存在する。