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猫の目犬の鼻』著:丹下健太
価格:1500円(税抜)
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このたび、『猫の目犬の鼻』が刊行されることになりました。この本の表題にもなっている「猫の目犬の鼻」という話には、そのタイトルからもわかるように猫が登場します。それも何匹も登場するのですが、そのほとんどが野良猫です。

私は猫を一匹飼っていて、猫好きです。うちの猫は動物病院の前に捨てられていたのをその病院によって保護されたので、一応半日ぐらいの野良猫生活の経験があるのですが、残念ながら彼女はこの話に登場する野良猫たちのモチーフではありません。そのモチーフとなったのは当時近所に住んでいた野良猫たちです。

そもそも野良猫の話を書こうと思ったのは私が以前住んでいた場所がとても野良猫の多い地域だったからです。古い家が建ち並ぶ住宅地で、恐らくいろいろな場所でいろいろな人たちが餌をあげていたのでしょう、野良猫は本当に多く町を闊歩していました。家から東西南北のどの方向に歩いても、五分もすれば必ず一匹は野良猫に出会えるようなところでした。

もっといえば、私は長屋のような平屋に住んでいたのですが、その家の前やら家の裏やら、屋根の上やら、ところ構わず歩き回り、時には家の前に糞尿をしていったり、窓越しにうちの猫に何やらちょっかいをかけてくることもしばしばあり、家から出ずしても野良猫の存在を感じられるような環境で、良くも悪くも野良猫と共存を強いられていました。そんな生活を数年続けていたので、自然と野良猫のことを書いてみようという気持ちがわきあがってきました。

その野良猫たちの中でも特に印象深い猫たちがいました。それは二匹の猫です。白と薄茶色のぶち猫が一匹に黒猫が一匹。二匹はうちのすぐ近所にある小学校の使われていない裏門の前を根城にしていました。

最初の頃は仲の良い二匹だなあというぐらいにしか思っていなかったのですが、一ヵ月、二ヵ月、三ヵ月と見ているうちに一体この二匹はどういう関係なのだろうという疑問がわいてきました。二匹は半年経っても二匹で暮らしています。つがいなのか、きょうだいなのか、はたまた親子なのか(ちなみに二匹の性別は最後までよくわかりませんでした)。

もちろん、そんなこと考えてみたって二匹の関係がわかるわけがありません。わかるわけはないのだけれども、何せほぼ毎日通る道にほぼ毎日二匹がいるものだから気になってしまう。夏の暑い夜には校門の門柱の上に横になって涼をとり、寒い冬は二匹ひっついて暖をとる。もちろん四六時中、二匹を監視していたわけではないので、二匹のすべてを知っているわけではないですが、見た範囲では交尾をするわけでもなく、けんかをするわけでもなく、ただただ横にいるだけ。本当に不思議な関係の二匹でした。

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