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1億3200万円の脱税容疑から一転、無罪に 八田隆クレディ・スイス証券元部長 国税に勝った男がスクープ告白「マルサは突然やってきた」

職を失った。友人も去った。泣き寝入りすれば気持ちは楽になる。それでも、意地とプライドを懸けて争う道を選んだ。相手は日本最強の調査機関。ボロボロになって戦い抜いた元証券マンの闘争記。

誰にでも起こりうる

確定申告シーズンも終わりますが、この時期になるとマルサ(国税局査察部)や東京地検特捜部の取り調べを思い出して、嫌な気持ちが蘇ります。

私はかつてクレディ・スイス証券(以下CS)に務めており、普通の会社員がそうであるように、会社からの給与は当然、源泉徴収されているものと思っていたし、税理士に頼んで確定申告もしていました。

それなのに、突然マルサがやってきて、私が故意に「脱税」をしたとして、その日から5年以上も犯人扱いされることになりました。

私がいくら脱税する意思などないと説明しても、国税の査察官たちは「故意でやった」と聞く耳を持ってくれません。挙げ句の果てに、東京地検特捜部に起訴されて、長い裁判闘争を強いられる地獄の日々を強制されたのです。

このほど無罪を勝ち取ることができましたが、5年間で失ったものは大きい。

たくさんの友達やビジネスパートナーが私の元から去って行きましたし、内定が決まっていた香港での仕事は、告発されたために取り消しとなりました。

幸い子どもはカナダのバンクーバーに留学していたのでいじめにあうことはありませんでしたが、両親をはじめ家族には多くの負担をかけてしまいました。

にもかかわらず、控訴審で敗訴した東京高検の青沼隆之次席検事は、判決に対して「誠に遺憾」とのコメントを発表しました。5年もの間、損失を被り、苦しみを味わった私や家族に謝罪の一言もありません。

サラリーマンであれば誰しも私と同じような境遇に陥れられる危険性がある。そう思うと、いまでも驚きを通り越して恐怖すら感じます。

今後二度と、私と同じような不幸に遭う「被害者」を作ってはいけない。そのために、マルサや特捜部がいかにひどいことを私にやってきたのかをすべてお話ししたいと思いました。

八田隆氏(50歳)。元CS外国債券営業部の統括部長。'07年までの2年間に給与の一部として得た株式報酬などを申告せずに約1億3200万円を脱税したとして、東京国税局から強制調査を受けた。その後、東京地検特捜部が'11年12月に在宅起訴としたことを受けて法廷闘争が続いていたが、今年1月に東京高裁が一審通りの無罪判決を言い渡した。東京高検がこのほど上告を諦めたことで、八田氏の「完勝」が確定した。