読書人の雑誌『本』
『教育の力』著:苫野一徳---これからの教育を構想する

「ゆとり、是か非か?」
「教育は子どものためのものか、それとも社会のためのものか?」
「教え込むべきか、それとも子どもの興味・関心に寄り添うべきか?」

教育の力』著:苫野一徳 価格:800円⇒Amaoznはこちら

―教育をめぐる議論は、いつもこうした二項対立図式で語られてしまいやすいものです。

しかし、教育に限らず、特に価値をめぐる問題に、あちらかこちらか、どちらかが絶対に正しいなどということはまずありません。あちらにもこちらにも、一定の〝理〟はあるものです。

「あちらとこちら、どちらが正しいか?」こうした問いの立て方を、わたしは「問い方のマジック」と呼んでいます。「あちらかこちらか?」と問われると、わたしたちは思わず、「どちらかが正解なのではないか」と思い込んでしまう傾向があるのです。

どうすれば、わたしたちはこの不毛な二項対立に陥ることなく、教育を建設的に論じ合い、構想し、実践していくことができるでしょうか?

新著『教育の力』(講談社現代新書)では、その考え方の筋道を、まずは底の底から明らかにしました。そしてその上で、これからの教育をどのようなものにしていけばよいか、していくことができるか、その具体的なアイデア・プランを、多岐にわたって全方位的に論じました。

教育をめぐる不毛な対立を解消するためには、わたしたちはまず何をおいても、そもそも教育とは何か、そしてそれは、どうあれば「よい」といいうるかという、教育の〝根本原理〟を明らかにしなければなりません。

しかし残念ながら、この問いの〝答え〟は、これまで長らく見失われてきました。そしてそのために、特にこの数十年、日本の教育や教育政策は、右往左往してきた感が否めません。

もちろん、この問いに絶対に正しい答えなどありません。しかしそれでもなお、「なぁるほど、たしかに教育とはこのような営みだし、このような教育なら『よい』といえるな」と、だれもができるだけ深く納得できる〝答え〟は見出せるのではないか、わたしはそう考えています。そしてその共通了解可能な〝答え〟を見出し共有することができれば、些末な対立にこだわりすぎることなく、むしろそれぞれのアイデアを協力させ合って、これからの教育を構想していくことができるはずです。

大きなヴィジョン・指針をある程度共有できたなら、その具体的な方法については、議論を建設的に展開していくことができるようになるはずなのです。