第6回/モノづくりの担い手が社会に新たな風を送り込む
希望 "Hope" Vol.6 —これから生まれてくる子どもたちのために
学長が指揮をとる「ナノ電子工学研究室」では、トヨタと共同研究が進行中。「現在、大学全体では民間企業と40以上の共同研究を行っています」(榊学長) 撮影/三宅祐介
社会人学生が多く集まってくるのも豊田工大の特徴。これまで計143社から派遣されてきた。「彼らと一般学生の交流の深さも自慢です」(榊学長)

トヨタ創業の地に、工学に夢を抱く若者たちの学び舎がある。在学生は約500人。小さいけれど情熱溢れる大学を取材した。

「物質を構成する最小単位が『原子』。その原子の並べ方を工夫すると、近い将来、ハイブリッド自動車に不可欠な電力の技術開発に役立つかもしれない。素敵な話でしょう?」

こう話すのは豊田工業大学(愛知県名古屋市)の学長・榊裕之氏(69歳)。40年に亘って研究を続ける、半導体素子の第一人者だ。

'10年に学内に設立された「スマートビークル研究センター」は、人工知能による運転支援ソフトウェアの開発を目指す。写真は、障害物を回避して自動駐車できるシステムを搭載した試作車

傍らにはふたりの大学院生。学長が語りかける。

「在学中に一生の研究課題や目標を見つけられたら、幸せだよ。私のようにずっと追究できるから(笑)」

豊田工業大学は、「日本の将来を担う技術者の育成を通じて社会に貢献したい」というトヨタ自動車の理念のもと、'81年に開学した理工系の学び舎である。

トヨタを筆頭に、モノづくりの現場でインターンシップができるなど、産学一体の取り組みが強みで、就職決定率は毎年100%を誇る。また、教職員と学生が日々対話の機会を持ち、学長との距離も近い。工学に夢を抱く若者たちに、今日も学長自ら話す。

「ともに前に進もう。世界に新しい風を吹かせよう」

卒業生たちは、三菱電機やデンソーなどメーカーの技術職の他、大手商社でも活躍している。

走行環境を認識する装置の実験車。走行時に交通標識や歩行者、車輛などの対象物を、センサーで認識する技術だ

〈了〉