第1回 森の案内人がもたらす感動体験
希望 "Hope" Vol.1 —これから生まれてくる子どもたちのために

里山の自然を五感で味わう。ここには都会っ子が経験できない自然のアトラクションがある。森の案内人は大忙しだ

休むことなく呼吸し続ける「森」に触れ、子どもたちに、気づきと考える場を与えたい。愛知県豊田市郊外にある『トヨタの森』の中には、世界的企業が行う「環境教育」の姿があった。トヨタが行う社会貢献活動を追う。

虫眼鏡をもった子どもたちに森で捕まえたバッタを見せる杉山さん 撮影/三宅祐介

 「ほら見てごらん。これ、何の足跡だか分かる?」

散策の道中。森の案内人が足跡を見つけ、指さすと、子どもたちが目を輝かせた。

「どこにあるの!教えて、なになに?」

森を歩きはじめて、まだ数分。森の案内人・杉山時雄さん(57歳)と小学1年生15人は、立派な探検チームになっているのだった。

ここは愛知県豊田市郊外にある『トヨタの森』。トヨタ本社から車で15分の距離にあり、広さは東京ドーム約10個分。豊田市を中心に、年間7000人の学童が自然学習に訪れる森もあり、一般客の出入りも自由だ。

冒頭、散策コースに現れた足跡の正体はイノシシ。聞けばこの森には、キツネやタヌキ、ニホンカモシカ、フクロウ、ムササビなどの野生動物が生息するという。

"森の住人"の巣箱を紹介。「今日はムササビが中にいるね!」そう杉山さんが話しはじめると、子どもたちの歓声がこだました

東海地方に群生する固有種・シデコブシをはじめ、季節の花を観察できることもリピーターが多い理由だ。

'97年、環境社会貢献活動としてスタートした『トヨタの森』は、荒廃した里山の整備を経て誕生した。

「毎日が勉強。森づくりに終わりはありません」

そう話すのは、前出の杉山さん。こんな話が続く。

「春 は野草摘み、夏は森の池で魚釣り。秋は赤や橙に紅葉した葉っぱやドングリ拾い。冬になれば、手づくりのソリで斜面をすべるソリ遊び。森の案内人は計6人。 過去に獣医師を務めた人や、現在フクロウの研究家として活動する私自身など、自然を熟知したエキスパートばかりです。私たち案内人の思いはひとつ。森遊 び、森歩きをとおし、都会の生活では感じることのできない『自然からのメッセージ』に何かひとつでも気づいてもらうこと。それは例えば、五感を使い、心で 感じ、考え、『生き物を大切にする』という基本を実感することだったりする。いつの時代でもこういう経験は、子どもの成長にとって大切ですから」