学校・教育 IT
厳しい試練にさらされる米MOOCs(大規模オンライン大学講座)---今春始まる日本版サービスの参考に
日本版MOOCsとしてスタートする「gacco」のトップページより

大規模なオンライン大学講座、いわゆる「MOOCs(Massive Open Online Courses)」が日本でも本格的に立ちあがろうとしている。先日、MOOCsの草分けである米Udacityが、リクルートと共同で一部講座の日本語字幕付きサービスを開始したのに続き、この4月からはJMOOC(日本オープンオンライン教育推進協議会)が「gacco」というプラットフォーム上で、「インターネット」「日本中世の自由と平等」「マンガ・アニメ・ゲーム論」など幅広い科目を提供する予定だ。

折角、日本で盛り上がり始めたところに水をかけるつもりは毛頭無いが、既に世界的な広がりを見せている米国版MOOCsは、当初期待されたほどの成果は上がっていないようだ。

●"After Setbacks, Online Courses Are Rethought" The New York Times, December 10, 2013

上の記事によれば、米国に本拠を置くMOOCsは、利用者数は数百万人と極めて多いのだが、科目を修了する人は全体の僅か4パーセント。また履修登録者の約半数は、一度もそのオンライン講義に参加したことがない。要するに、MOOCsに登録はするものの、最後までやり遂げる人は極めて少ないということなのだ。

米国のMOOCsは、そのほとんどが営利ビジネスだ。MOOCsのビデオ講義は、受講者に対し基本的に無料で提供されるが、受講者同士の交流や教師とのコミュニケーションなどに使うシステム、さらにはオンライン講座の修了証書(正規の大学における学位ではない)などは有料だ。これらが主な収益源なので、上に記したように利用者の参加率や修了率が低いとビジネスにはならない。このためUdacityなど主要なMOOCsは今、講座の在り方やビジネス・モデルの再検討を迫られている。

一体、なぜ米MOOCsは上手く行っていないのだろうか? 日本版MOOCsの今後に資するためにも、米MOOCsの誕生から、ここまでの経緯を振り返り、その長所や問題点を洗い出してみよう。

Udacity」のトップページより

AI(人工知能)の講義を16万人が受講

米MOOCsの草分けは、グーグル自動運転車の開発責任者として知られるセバスチャン・スラン(Sebastian Thrun)氏らが2012年2月に共同で設立した「Udacity」だ。この前年、スラン氏が教鞭をとっていたスタンフォード大学が、無料のオンライン講座3科目を試験的に実施。スラン氏はここで、「人工知能入門(Introduction to AI)」という講座を担当した(同講座でスラン氏は、グーグルの技術開発責任者であるピーター・ノービグ氏と分担で講義した)。

この人工知能入門は、「こんな難しい講義を受ける人は少ないだろう」という当初の予想に反し、世界190ヵ国から約16万人の受講者を集めることに成功した。この講座開設を発表した時点では、世間の反応はサッパリだったが、スラン氏の知人で大変顔の広いAI関係者が自分の人脈を使って宣伝してくれてから、ヴァイラル式に講義の評判が広がり、人気が爆発したという。

とにかく、これで自信を得たスラン氏は、今度は自分でオンライン大学を創設しようと思い立ち、自らの仲間2名と共同でUdacityを創設した。またスラン氏と同じく、スタンフォード大学コンピュータ学部・准教授のアンドリュー・エン(Andrew Ng)氏も、スラン氏から遅れること2ヵ月となる2012年4月に、一人の仲間と共同で「Coursera」というMOOCsを設立した。

ちなみにエン氏は、グーグルと共同で「グーグル・ブレイン」という大規模なニューラル・ネットを構築。これが2012年にユーチューブ上の大量の動画を基に、「猫」のイメージを自動的に描き出して世界的な注目を集めた。エン氏もまた、2011年にスタンフォード大が実施した無料オンライン講座で、人工知能の一種である「機械学習」の講義を担当。ここで世界中から10万人以上の受講者を集めることに成功している。

スラン氏とエン氏は共にスタンフォード大学に籍を置き、「AI(人工知能)」と「ロボティクス」を専門とする科学者・エンジニアだ。両氏はまた、グーグルを舞台に活躍している点も似通っている。以上のように非常に共通項の多い二人が、別々のMOOCsを立ち上げたのは、偶然かもしれないが非常に興味深い。傍目から見ると、「一緒にやればいいのに」とも思えるのだが、ひょっとしたら二人は、互いに強いライバル意識を燃やしているのかもしれない。

Coursera」のトップページより

スラン氏が創設したUdacityとエン氏が創設したCourseraは、2012年のサービス開始と共に順調に講座数と利用者数を伸ばした。特にCourseraの成長には目を見張るものがあり、創設から2年足らずのうちに自然科学から人文・社会科学まで広範囲に渡る講座を開設。ここに世界全体から数百万人の利用者を集めることに成功した。エン氏によれば「Courseraの成長速度はフェイスブックを上回っている」という。

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