古賀茂明 日本再生のために--「厚生労働省の職業訓練事業めぐる入札疑惑の本質」「建設バブルで成長の芽を摘むアベノミクスの失敗」
古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジンvol084---日本再生のためにより
「JEED」のホームページ

厚生労働省の職業訓練事業めぐる入札疑惑の本質

●入札条件を入札直前に変更

厚生労働省の職業訓練事業で官製談合疑惑が報道された。事件の概要はこうだ。

安倍政権は、消費増税前の景気対策として、2月に成立した2013年度補正予算に「短期集中特別訓練事業」278億円を計上した。この事業では、失業者や転職者を支援するため、職業訓練を受ける人に国が月10万円程度の給付金を支払うとともに、訓練を実施した機関にも受講者の人数に応じて奨励金を払うことになっている。

厚生労働省は、この予算のうち、20億円分の事業について、2月18日午前10時ごろ、事業を実施する企業や団体を募集する企画競争入札の公示を同省のホームページに掲載した。

ところが、掲載してから約1時間後にこの公示を削除し、翌日19日に改めて公示し直した。しかも、おかしなことに、当初18日に出された公示では、入札する組織の要件として「厚生労働省競争参加資格(全省庁統一資格)」が盛り込まれていたが、19日の公示では削除されていた。つまり、入札の条件が、わずか1日の間に書き変えられたのだ。厚労省は、公示をやり直した事実も変更が生じた点についても公表していない。

その後、入札は3月4日に行われ、応札したのは、厚労省所管の独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」だけで、5日には、このJEEDの落札が決まった。

公示前の17日には、厚労省でこの事業を担当している企画官以下数名が、何とJEEDをわざわざ訪問し、あろうことか、入札の仕様書の案を事前に見せていたという。

●天下り団体に予算が流れる

補正予算で厚労省についた予算278億円は、全額がいったん特別民間法人「中央職業能力開発協会」(厚労省所管)に移されて、それをこの協会が管理する。そして、実際の訓練事業は入札を行って落札者が担うという迂遠な仕組みとなっている。

この協会には、厚労省の局長級幹部を含む中央官庁出身の9人が再就職している。典型的な天下り団体だ。さらに、JEEDには、厚労省から70人以上の出向者がいると言う。

こうした一連の事実をどう見るか。これは明らかに、厚労省が、自分の天下り・現役出向先に巨額の予算を流して、国民の税金を食い荒らそうとしたのだと考えるのがごく自然な見方だ。

そして、何と驚くべきことに、厚労省自身が、それを認めている。3月11日に行われた厚労省の会見では、大臣官房会計課の参事官がこう述べている。

「彼ら(この事業の担当者たち)の頭の中では、・・・・・、機構がやるもんだと思っているわけです。だからそこに問題があるんでね。」

「(JEED側も、入札の結果、自分たちに)落ちるだろうとは思っていたかはわからないが、・・・・自分たちがやるという風に、やらざるを得ないと思っていたと思いますよ。」

要するに、厚労省側もJEED側も最初から、この事業はJEEDがやるものだという前提で動いていたということだ。それにしてもこの会計課参事官のあっけらかんとした態度は何なんだろう。全く当事者意識がなく、まるで、外部の評論家のようではないか。

●競争を装った随意契約は他省庁含めてごく普通 今回の件は氷山の一角

会計課参事官が、ここまで露骨に身内を「バカにする」のは異例のことだ。役所は、とにかくいかなる場合でも、自分たちの責任を認めたがらないというのが相場だ。認めるとしても、追い詰められてどうしようもなくなってからだ。

では、何故、今回は、簡単に自分たちの非を認めたのか。それは、一言で言えば、「トカゲの尻尾切り」だ。今回の予算は、実は、もともとJEEDに流すはずだった。企画競争入札という形をとっていても、実質は随意契約だ。会計課の参事官もこう述べている。

「先ほど随契(随意契約)にすればよかったじゃないかという話があるみたいに、それは随契にすればよかったのかもしれない。」

予算を取る時に、随意契約として、実施者はJEEDである旨を財務省に説明しておけば、何の問題もなくJEEDに予算を流すことができたはずだ。そうしておけば、入札自体行う必要はないから工事内容でミスが出るなどということもない。厚労省とJEEDが事業実施のために契約前に相談することも、むしろ当然のことだということになる。

そもそも、会計課はこうした事態を認識していなかったのか。

私は、経産省会計課にいたとき、財務省の主査と予算折衝をやったが、一つ一つの予算について、一体誰が実施するのかということは、当然精査される。補正予算であれば、短期間で実施しなければならないので、財務省は、必ず、事業の実施体制を詳しく聞いてくる。いい加減な入札で民間企業でやりますなどといっても、今回のような場合は、全国津々浦々で実施できるのか、などと聞かれれば、自ずとJEEDしかないという説明をしていたはずだ。あるいは、説明するまでもなく、厚労省と財務省の間には、実施はJEEDという了解が存在していたのは確実だと見ている。

このように、天下り団体に流れることに決まっている予算でも、批判を避けるために、競争入札の形式をとる例は、他省庁も含めてごく普通にある。つまり、今回の例は、氷山の一角に過ぎないのである。従って、全省庁にわたって、同様の問題がないかチェックする必要があるだろう。(・・・以下略)

古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジンvol084(2014年3月14配信)より