ブルーバックス
『量子的世界像 101の新知識』
現代物理学の本質がわかる
ケネス・フォード=著 青木薫=監訳 塩原通緒=訳

メニューページはこちら

素粒子からブラックホールまで
奇妙で驚きに満ちた量子物理の世界。
巧みな問いかけで
その全体像を描き出した画期的入門書!

 すべては確率に支配され、複数の状態が重ね合わさり、粒子は生成と消滅を繰り返す──。古典物理学の世界観を覆す奇妙で驚きに満ちた量子世界。その全体像を見事に描き出し、量子物理学の最前線へと誘う。


はじめに

量子世界のものの見方

 量子物理学の歩みは、それまで古典物理学が作り上げてきた世界観をくつがえす発見、そして理論の発明の連続だった。しかし、どれが最も重要な発見で、核心となる概念が何かとなると、その答えは人によって変わるかもしれない。とはいえ、少なくとも以下に挙げる12の項目は、自然の記述に量子物理学がもたらしたものの本質をそれぞれにとらえている。これらはいずれも新しいものの見方であり、そのすべてに共通するのは、いわゆる「常識」にそぐわないということだ。わたしたちが毎日の経験にもとづいて、物理世界はこんなふうに動いているのだろうと予想することとは、どの項目も一致していない。

 常識と量子世界のありように隔たりがあるのは、単純な理由からである。わたしたちの住む世界は、量子効果──および相対論的効果──が五感に直接的に作用してこない世界だからだ。わたしたちは自分の目で見えるもの、耳で聞こえるもの、舌で味わえるもの、鼻で嗅げるもの、手で触れられるものにもとづいて、世界観を(少なくとも物理世界に対する見方を)構築している。この世界観が量子の世界―非常に小さいものと非常に速いものの世界―でもそのまま有効だった、ということになればよかったのだが、そうではなかった。だからわたしたちは、奇妙でもあり、すばらしくもある新しい視点に直面する。これらの視点は本書の縦糸となっている。つねに気に留めておいてもらいたい。

 もしも日常生活を量子世界で送っているエイリアンがいたなら、と想像してみよう。彼らにとって、つぎに挙げるようなことはあくびが出るほど当たり前の事実だ。それがわたしたち人間にとっては、衝撃的で、知性を広げさせられるものの見方なのである。

量子化
 自然は、粒々の塊の状態になっている。この世界をつくって
いる物質が粒子からできているというだけでなく、変化もな
めらかではなく、とびとびに起こるのである。

確率
 小さな世界における事象は、その事象について知っておくべ
きことがすべて知られているとしてもなお、確率に支配され
ている。

波と粒子の二重性
 物質は、波としての性質も粒子としての性質もあらわすこと
ができる。

不確定性原理
 ある種の測定については、その精度にどうしても根本的な限
界がある。

消滅と生成
 すべての相互作用は粒子の消滅と生成をともなう。

スピン
「点状粒子」(物理的な広がりがなさそうに見える粒子)でも、「回転(スピン)」に相当する物理量「スピン」を持つことができる。スピンは量子化された特性であり、とびとびの値をとる。

重ね合わせ
 粒子や粒子系は同時に2つ以上の運動状態にいることができる。

反社会的な粒子
 フェルミ粒子は排他原理にしたがう。2個以上の同一のフェルミ粒子が同じ運動状態を同時に占めることはできない。排他原理があるために、周期表が存在する。

社会的な粒子
 ボース粒子は多数で同じ運動状態を占めることができる(かつ、そう「したがる」傾向さえある)。そのために、ボース-アインシュタイン凝縮という究極の「共存」を実現することもできる。

保存
 ある種の量は、どのような変化過程を経てもつねに一定を保つ。つねにではないが、特定の変化においてだけ一定を保つ量もある(「部分的に保存される量」)。

速さの限界
 光速は自然における速さの限界を定める(この相対性理論の帰結が最も劇的にあらわれるのが量子世界である)。

E=mc2
 質量とエネルギーは、結びついてひとつの概念になる。そのため質量はエネルギーに、エネルギーは質量に変換することができる(この相対性理論の帰結も、やはり量子世界で明白にあらわれる)。
 

著者  著者 ケネス・フォード(Kenneth Ford)
1926年生まれ。理論物理学者。ジョン・ホイーラーのもとでPh.Dを取得。ブランダイス大学、カリフォルニア大学アーバイン校、マサチューセッツ大学などで学部長などを歴任。1987年から1993年まで米国物理学協会会長を務めた。

監訳者 青木薫(あおき・かおる)
1956年生まれ。京都大学理学部卒業、同大学院博士課程修了。理学博士。サイモン・シン『フェルマーの最終定理』(新潮社)はじめポピュラーサイエンスの翻訳多数。著書に『宇宙はなぜこのような宇宙なのか』(講談社現代新書)。2007年度日本数学出版賞受賞。

塩原通緒(しおばら・みちお)
1966年生まれ。立教大学英米文学科卒業。主な訳書にリサ・ランドール『ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く』(NHK出版)、フィリップ・ボール『流れ 自然が創り出す美しいパターン』(早川書房)など。
『量子的世界像 101の新知識』
現代物理学の本質がわかる

ケネス・フォード=著
青木薫=監訳
塩原通緒=訳

発行年月日:2014/03/20
ページ数:424
シリーズ通巻番号:B1856

定価:本体1260円(税別)
     ⇒本を購入する(Amazon)
     ⇒本を購入する(楽天)


(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)