県予選1回戦敗退チームが、快速球投手の入部で甲子園を目指す!?松井秀喜さんが推薦、野球を愛するすべての人たちへ捧げる青春小説『どまんなか(1)』

「野球を愛するすべての人たちに」

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■推薦のことば   松井秀喜

どまんなか(1)』著:須藤靖貴
税抜価格:610円
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引退してから、どんなことが変わりましたか?

よく、こんなふうに質問されます。
プロ生活が20年もあったのだから、変わったことも多いことでしょう。なかなか答えにくいかもしれませんね。そう言添える方もいます。

でも、そんなとき、僕は迷わずに答えることができる。
ゆっくり本を読めるようになったこと。一番大きいのは、そのことです。

小学校、中学校のとき、野球以外の趣味といったら、何よりも読書がありました。自分だけの静かな時間。それがとても好きで、本を読んでいるときは、両親や兄もそっと見守っていてくれたものです。

活字への〝飢え〟が、僕にはあるらしい。メジャーに行ってからが特にそうで、取材に来た日本の記者の人たちが選んでくれたり、僕がリクエストしたりしたお土産のなかでも、一番嬉しかったのは日本の本だった。試合前にクラブハウスで、日本から持ってきてもらった本を読む。これが、最高の息抜きでした。ただ、時間が経つのを忘れるほど読みふけっていたので、届けてくれた記者の方は、他の報道陣から「日本の本だけはやめてくれ。マツイがクラブハウスから出てこなくなる」と、ブーブー文句を言われていたそうですが。

でも、いくら読書が息抜きになっても、実際にはそうした時間がなかなか取れませんでした。「もっと本を読めたらいいのに」というもどかしい思いは、野球に打込むようになった高校時代からずっとあって、「いつかユニフォームを脱いだら、本にかかわる仕事をしてみたい」なんてことも考えていました。

そうした思いを、いまから15年ほど前、巨人にいたときの対談で作家の伊集院静さんにお話ししたことがあります。この対談は、僕からお願いするかたちで実現しました。高校3年生のときに『受月』(※編集部註=1992年上半期の直木賞受賞作)を読んで以来、伊集院さんの大ファンで、できることなら伊集院さんにお目にかかりたいと、出版社に申し入れたのです。

この対談で伊集院さんに、本を読んで学ぶことの大切さ、素晴らしさを教えていただきました。そしてありがたいことに、対談を終えた後、たくさんの本も頂戴しました。城山三郎さんの『落日燃ゆ』、藤沢周平さんの『蟬しぐれ』、井伏鱒二さんの『黒い雨』、ヘミングウェイ『老人と海』、サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』、チャーチル元首相『チャーチル自伝』など。伊集院さん手ずから「読んでおくべき名著」を選んで送ってくださったのです。なかでも僕が強い印象を受けたのは『老人と海』。何度も読み返している、愛読書のひとつですね。

そして今また、いい本に出会うことができました。本書の『どまんなか』です。