館淳一 第2回 「微分積分の壁を乗り越えられていたら、シマジとは出会わずに真っ当な人生を歩んでいたかもしれない」

撮影:立木義浩

第1回はこちらをご覧ください。

シマジ 集英社に合格した9人が一堂に会したあの日、おれと館が抱き合った運命のあの日、おれはもう一人の同期の男をイテコマシていたんだよ。

 広谷だろう。広谷から何度も聞いたが、じつに面白い話だよね。

立木 広谷さんって、あの真面目な人だろう。おれはどうしてシマジと広谷さんがあんなに仲がいいのか、いまでも不思議なくらいだね。

セオ 広谷さんって、シマジさんが責任編集をしていた高級文化雑誌『マグナカルタ』で、チャーチルのことを連載していたあの広谷直路先生のことですよね。一度、銀座のバーでシマジさんから紹介されましたが、お酒は一滴も飲んでいませんでした。大学の教授みたいな感じで、立木先生がいわれるように、いかにも真面目そうな方でした。

シマジ それが、広谷は若いときは集英社でいちばんの大酒飲みだったんだよ。

セオ えっ、あのウーロン茶ばかり飲んでいた広谷さんがですか!?

立木 それはおれも信じられないな。

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 シマジお得意のアフォリズムを借りていえば、たしかに「人生は恐ろしい冗談の連続」なんですね。広谷はぼくと同じ「週刊明星」に配属になったんです。広谷の話によれば、めでたく入社試験に合格して、はじめて集英社ビルの階段を登って行くと、当時の集英社には階段があったんですよ、階段のいちばん上のところで、「こっち、こっち」と手を振りながらニコニコしている男がいたんだそうです。その男こそシマジだったんですよ。