【国土交通 その3】(道路・鉄道)財政に頼らない民間主導による交通インフラ投資を!
〔PHOTO〕gettyimages

2年前に起きた中央自動車道笹子トンネル事故は記憶に新しい。日本の高速道路事故史上、最大の9名の死者を出したこの事故の原因の一つは、設備の老朽化であった。笹子トンネルの開通は昭和52年だが、日本ではもっと昔の昭和30年代、東京オリンピックの頃に整備された首都高速等の道路インフラが多い。

今後、建設後50年以上経過する施設の割合が非常に高くなっていき、それらのインフラの老朽化がさらに進む。国土交通省の調査によると、日本全国の道路橋における建設後50年以上経過する施設の割合は、2009年で8%であるのが、20年後には53%にまで急増する。

いわば、日本のインフラが高齢期を迎えるわけで、インフラの更新ニーズはどんどん高まっていくのだ。

道路は国家にとって基本的な社会インフラであり、そのインフラを維持・更新する必要があることは間違いない。しかし、今後どんどん増大していくインフラ整備・更新を、全て税金で対応していたのでは、国家の財政破綻がさらに進んでしまう。

道路に限らず、鉄道や公営バスなどの都市交通に関しても同様だ。税金による補助で成り立たせる社会インフラから、今後は「財政に頼らない交通インフラ」に基本的な考え方を変える必要があろう。

一方で、維持管理・更新ニーズをとらえて、IT等の先端技術を社会インフラへ組み込んでいくことができれば、極めて合理的だ。先端技術の導入で道路インフラの安全性や効率性を向上させるとともに、新たな市場の創出にもつながる。

100の行動国土交通編の第3回では、今後の道路・鉄道などの社会インフラの新たな考え方について提言したい。

1. 高速道路会社は完全民営化し、上場を目指せ!

先述のように、例えば首都高速は、建設後40年以上の部分が3割、30年以上は5割弱を占めており、損傷が発見されていても補修が追い付かない未補修箇所も、10万件程度あるという。

こういった更新や修繕に必要な費用は、東日本、中日本、西日本のNEXCO3社の合計で5~10兆円と見積もられている。このインフラ更新は、財政に頼るのではなく、高速道路の完全民営化によって財政負担なく進めるべきだ。

有料道路については、欧米ではコンセッション方式での民間開放が進んでいる。コンセッション方式とは、施設の所有権を移転せずに、民間事業者に施設の事業運営に関する権利を長期間にわたって付与する方式だ。

日本の高速道路も民営化されており、一見、コンセッション方式のようではある。たしかに、道路の保有は「官」である「独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構」、道路事業の運営は「民」の「高速道路会社(NEXCO)」となっている。

しかし、実態は、高速道路会社の株主は国であって、官民連携ではなく官官連携だ。このため、民間事業者が経営判断権を持っているわけではなく、料金設定や道路新設、インターチェンジ新設などに関しても、民間事業者に決定権がない。

そうではなく、道路運営会社を完全民営化し、料金設定権や新規道路の整備・インターチェンジの開設に関しても権限を与え、道路運営・整備を完全に民間開放すべきだ。そうすれば、道路会社は利益を得るために、利用者の満足度を高め、渋滞が発生せず、利用者が増えるような設備投資や料金設定を行うなど、利用者=国民の利益が最も高まる企業行動をとることになる。

そのためには、現行の道路整備特別措置法が採用している「償還主義」と「(将来における)無料開放の原則(通行料金収入で道路建設費を償還した後は無料開放する原則)」などを法改正によって撤廃すること、国か地方自治体に限定されている道路管理者を民間事業者に開放することなどの制度改正が必要だ。

2004年の高速道路民営化によって、サービスエリアなどに関しては明らかにユーザーの利便性が向上し、利用者増につながっている。高速道路会社を完全民営化させ、上場を目指すことで、サービスエリアだけではなく、柔軟な価格設定やインターチェンジの改廃など、有料道路全体に民営化の恩恵を行き渡らせることが可能になる。

さらに、今後増大する維持更新も財政に頼ることなく進めることができる。政府には有料道路のコンセッション方式による完全民営化を是非とも進めてもらいたい。

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