「開いてて良かった」から「御用聞き」に
セブン―イレブン・ジャパンの宅配サービスが好調[コンビニ]

店舗従業員がお弁当などを届ける「セブンミール」サービス。顔の見える関 係が地域の見守り役に(セブン&アイ・ホールディングス提供)

全国に約1万6000店のコンビニエンスストアを展開するセブン-イレブン・ジャパン(東京都千代田区、井阪隆一社長)が、2000年9月に始めたお食事お届けサービス「セブンミール」の今年度の売り上げが前年度の2倍以上の250億円に達する勢いをみせている。好調の背景には、独居高齢者世帯や単身、共働き世帯の増加など社会環境の変化が大きく影響している。コンビニが日本に登場して40年。当初の「開いてて良かった」から「御用聞き」へと転換が進み、地域の「見守り」「防犯」「防災」の拠点としての役割を担うようになった。

埼玉県川口、浦和(現・さいたま市)の両市で始まったセブンミールは、配達条件は1000円以上の注文で200円が必要だった。配達は店舗が担当するほか大手宅配業者に委託していた。システムが大きく変わったのは12年5月。注文500円以上で店舗の従業員が無料でお届けし、配達する商品はセブンミールのお弁当などに加え、店舗内の商品も扱う方針に切り替える新スキームを打ち出した。

電話、ファクス、ホームページ、店頭で、前日の午前10時半までに注文すれば、昼食は当日の正午ごろまでに、夕食は午後5時ごろまでに届く。管理栄養士が監修した「日替り弁当」「お総菜セット」(各500円)のほか、カット野菜、飲料、お米、日用品まで注文できる。会員数は昨年11月時点で約46万人に上る。利用者の約6割が60歳以上の高齢者だが、子育て中や働いている女性、さらには1人暮らしのビジネスマン層の利用も多い。

セブン-イレブン・ジャパンは06年から新しい形の「御用聞き」を販売戦略に取り入れてきた。配達の際に「お弁当のほかに何かご入り用のものはないですか」と注文を受け付ける。24時間営業でいつでも買い物ができるという「待ちの営業」から、自宅を訪れる「顔の見える営業」へと転換してきた。「加盟店の経営者は元々、酒屋さんだったりと、そもそも御用聞きをしていらしたところが多い。ある意味では原点にも戻ったともいえるが、顔の見える営業で売り上げだけではなく、さまざまな好影響をもたらしている」(セブン&アイ・ホールディングス広報センター)という。

「セブンらくらくお届け便」の配達用として超小型電気自動車「コムス」を13年度末までに1200台配備する。さらに13年11月からはより小回りの利く電動アシスト自転車の順次導入を進めるなどの強化策を打ち出し、すでに今年1月末現在、全国の1万2000店でセブンミールを展開している。12年度のセブンミールの売り上げは約120億円、13年度は倍増の約250億円に達する見込みで、15年度は約450億円の計画を立てている。

こうしたお食事宅配サービスが好調な背景には、社会環境の大きな変化がある。総務省の「人口推計」では65歳以上の高齢者は12年には3079万人と3000万人を超え、13年には3186万人と推計されている。4人に1人が高齢者だ。これに対して、国勢調査では総世帯数は年々増加し、10年では5195万世帯に上る。1世帯当たりの人数は1980年に3・22人だったのが、10年には2・42人と減少を続けている。単身世帯は10年時点で32・4%、2人世帯は27・4%と、単身または2人世帯が約6割を占めている。

さらに追い打ちを掛けているのが飲食料品小売業の店舗数の減少だ。経済産業省の商業統計によると、79年の小売業者数は167万だったが、12年には99万と大幅に減っている。これに対して、総売り場面積は79年の2597万坪から増加を続け07年には4536万坪となっている。高齢者問題に詳しいジャーナリストの藤本順一氏は「住宅地の近くの商店が減り、車を運転できなければ買い物に行けないという状況が生じており、1人暮らしの高齢者が深刻な状況に追い込まれている」と分析している。

さらに総務省の「労働力調査」では女性の就業率は80年の51・5%から年々増加を続けており、13年(6月時点)では62・3%に達している。厚生労働省の国民生活基礎調査(12年)では、5歳ごとの年齢層別では40歳から54歳の主婦層の7割以上が働いているとの結果が出ている。藤本氏は「深刻な高齢者問題に加え、買い物や家事にかけられる時間が少ない主婦層が増え、家庭で食事を作り、家族で食卓を囲む習慣そのものが変質してきている」と分析する。

セブン-イレブン・ジャパンは13年11月に福岡県と「包括提携協定」を締結した。協定内容は地産地消、県産品の販売拡大、観光振興、地域の安全・安心に関すること、高齢者・障害者の支援――など10項目に上る。さらに福岡県が実施している高齢者の見守り事業「見守りネットふくおか」の協定も締結した。福岡県内には786店舗(1月末現在)があり、お届けサービスを実施している店舗の従業員らが、高齢者宅などの届け先で異変を察知した場合に地元自治体に通報するというシステムだ。

行政サービス、防犯、防災も担う

この40年でコンビニの果たす役割も大きく変化してきている。「住民票の写し」「印鑑登録証明書」の発行などの行政サービスを導入したり、警察、消防などと連携した「セーフティステーション活動」を展開してきた。最近では東京23区内の店舗に災害時に備えた非常用特設公衆電話の設置を進めるなど、行政の役割を補完し、地域の防犯、防災活動などの拠点として大きな意味合いを持っている。経産省の有識者による「社会インフラとしてのコンビニエンスストアのあり方研究会」が09年4月にまとめた報告書では、(1)環境(2)安全・安心(3)地域経済活性化――などについての取り組みと課題について提言している。

藤本氏は「超高齢化社会の中でコンビニの果たす役割は重くなっている。店舗側も高齢者や障害者がより利用しやすいような店舗作りも必要になってくる。だが、こうした動きは民間企業の力だけでは限界もある。国も高齢者支援に取り組む企業への税制優遇措置などの支援策を取るべきだ」と話している。

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