カイジ「勝つべくして勝つ!」働き方の話
【第5回】消費税増税直前! 何を買うのがお得?
~商品と給料の「値決め」のルールを知ろう~


漫画『賭博黙示録 カイジ』とは?

自堕落な日々を過ごす主人公、伊藤開司(いとう・かいじ)。そのカイジが多額の借金を抱えたことをきっかけに「帝愛グループ」をはじめとする黒幕との戦いに挑んでいく大人気漫画。命がけのギャンブルを通じて、勝負師としての才能を発揮するカイジだが、その運命は果たして・・・。

(作者:福本伸行 講談社『週刊ヤングマガジン』で1996年11月号~1999年36号まで連載された作品)


【第4回】はこちらをご覧ください。

「4月からの消費税増税前に、いろいろ買っておこう」なんて考えている人は多いかもしれません。テレビでも、専門家やタレントが「何を買えばいいのか?」と議論している様子が、毎日のように流れています。

情報番組Aで「日用品や家電製品は、増税後もセールなどで安くなるので買わなくていい」という結論が出ていたかと思えば、1時間もしないうちに次の情報番組Bでは「今、お買い得の家電!」というコーナーが設けられていたりします。「これでは消費者も混乱するよなぁ」と少し苦笑いしながら僕はそれを見ていました。

「増税前に何を買えばお得ですか?」と僕も人から聞かれることがあります。でも「今、必要じゃないものは、買わなくてもいいよ」という、ごく当たり前の返事をするようにしています。身も蓋もない答えですが(笑)。

いま、目に飛び込んでくる情報を眺めていて痛感するのは、やはり世の中の情報は、僕たちを「消費」に向かわせようとするものが圧倒的に多いということです。「お得」や「節約」に関する情報もまた、「お得」や「節約」という「パッケージ」、あるいは「商品名」で、特定の商品を紹介し、僕たちに消費行動を促しているにすぎないのです。

こうした世の中の情報に踊らされている人はすぐ「何を買おうかな~」と考えますが「何を買おうかな~」と考えている時点で、本当は、それは不要なものなのです。

本当に欲しいもの、必要なものを買うのであれば、何も問題ありません。ですが、あなたにとって、もはや「何かを買うこと」自体が目的になっていないか、ちょっと立ち止まって考えてみてください。「増税前のこの時期に、何かを買わなきゃ!」---そんな思いにかられていないか、考えてみてください。

「何を買えばいい?」という議論に関して僕なりの結論を言うなら、今できる最も賢い選択は「不必要なものを買わない」ということなのです。

なぜ、そのお茶は150円なのか

「不必要なものは買わない」という大前提のもとで、でも、どうしても必要だから買いたいというものがあったとします。じゃあ、どんな商品を買うのが賢い消費者の選択なのでしょうか。

商品を選ぶときに、僕たちの指針として役に立つ、超根本的な考え方があります。それは「その商品の値段は、どうやって決まっているのか」ということです。

超根本的な考え方でありながら、現実には多くの人々がこの「値決め」のルールをまったく知らずに商品を買っています。そして、この「値決め」のルールというのは「商品の価格」だけでなく、僕たちの「給料」さえ決めている重要なものなのです。

今回は、その「値決め」のルールについて、すこし詳しく解説したいと思います。

みなさんは普段からいろんな商品を買っています。たとえば今日もペットボトルのお茶を買ったかもしれません。そのペットボトルのお茶は150円でした。では、なぜ150円なのでしょうか?

「だって、そういうものだから」

それでは答えになりません。

「そのくらいが相場だから」

では、その相場は誰が決めたのでしょうか? なぜ150円と決めたのでしょうか?

「150円分の満足感があるから」

本当にそうでしょうか? みなさんはお茶を買う時に150円分の満足感があることを実感して買っていますか? 真夏で喉がカラカラになる時期も、真冬で冷たい飲み物なんか欲しくない時も、同じ150円です。そう考えると、つじつまが合いません。

じつは、商品の値段はまったく別のロジックで決まっているのです。

経済学では、中世から、「商品の価値を決めるものは何か?」という研究がされてきました。「経済学の父」と呼ばれるアダム・スミスの時代には、"労働価値説"という理論が主流でした。これはつまり、「人間が働いた時間に応じて価値が決まる」ということです。作るのに2倍の労働が必要な商品は、そのまま2倍の価値がある、半分の時間でできる商品は、価値が半分になるということです。

そして、カール・マルクスは、「需要と供給のバランスが取れていたとしたら、値段は価値通りに決まる」と考えました。

しかしその後、「価格は、消費者が感じる満足度に基づいて決まる」という理論が出てきます。消費者が100円分の満足感を感じ、100円までなら払ってもいいと感じるから、その商品は100円になる、という理論です。

また一般的には、「値段は需要と供給のバランスがとれたところで決まる」というように習った人も多いでしょう。

いろいろなことが言われていますが、現在の日本経済を考えると、じつはアダム・スミスの「労働価値説」で説明できることがたくさんあります。つまり、その商品をつくるのにかかった労力に応じて、値段が上下するということです。これは意外な事実かもしれません。

ビジネスパーソンが重要視しているのは、「お客様のメリット」です。お客さんにメリットがある商品を提供することがすべてだと感じています。安く買いたたかれてしまうのは、お客さんへのメリットが不十分だからだ、と。

たしかにお客さんへのメリットは重要です。ですが、それだけで値段が決まっているのではないのです。むしろ別の要素の方が重要なのです。

ここでお伝えしたいのは、「自分がそれを買うかどうか(ほしいかどうか)」ではありません。「その商品の値段を見て、"ぼったくり!"と感じない値段はいくらまでか」ということです。

消費者の目線で見てみると、僕たちはビジネスパーソンとして会社内で言われていることと、全然違う判断をしていることに気が付きます。いちど消費者の立場になって、考えてみてください。たとえば、

・ミシンを使って30分でつくった刺繍
・1週間かけて手縫いでつくった刺繍

それぞれいくらの値が妥当だと思いますか?

おそらく大半の方が「手縫いの刺繍」を高く設定するでしょう。「1週間で手縫い」の方が高くて当然、と感じます。そして、ミシン製が手縫いと同じ値だったら、「ミシンでつくったのに、高くない? ぼったくりじゃない?」と感じます。もしかしたら、ミシンでつくった刺繍のほうが、ミスがなく質が高いかもしれません。しかし、それでも「1週間かけて手縫いでつくった刺繍」に高い値付けをするのです。

これはつまり、消費者として感じるメリット(刺繍の美しさ)ではなく、その刺繍を作るのにかかった労力で値付けを判断しているということなのです。

あるいは何かの習い事に行く時、回数や期間で割安・割高を判断することがあります。「10万円だけど、半年間だから安いよね」「2回で10万円は高い!」というように。

本来、気にしなければいけないのは、そこに通って目的のスキルが身につくかどうか(その講座のメリット)ですよね。もっと言ってしまうと、1回ですべてのスキルが身に着いた方が効率的でより大きなメリットがあるはずです。無駄な時間がかからない分、そちらの方が高いお金を払ってもいいような気がします。しかし、そうは考えず、回数や期間(相手が自分のために費やしてくれる時間、労力)で判断しているのです。

おわかりいただけたでしょうか。僕たちは消費者として商品を「それを作り上げるのに必要な労力」で判断しています。そしてそれをベースに妥当な値段を考えているのです。

たとえば、15年前に比べて、パソコンは圧倒的に安くなっています。それはパソコンのメリット(性能)が低下したわけではありません。むしろ性能は大幅に上がっています。技術革新によって安く製造できるようになった、労力がかからず製造できるようになったから安くなっているのです。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら