インパクトがあるオリジナル写真を「記憶術」で作る方法

モデル:KONAN  制作:趙燁(ちょうひかる)

ネットの記事では、最初の写真でインパクトを出せると、平均PVの5~15倍のアクセス(当社比)がでます。例えば上の写真は、2014年1月8日にリリースされた映画『ウルヴァリン:SAMURAI』のブルーレイ&DVDのPRで、「新幹線の刺青を入れた女」という記事を「20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン」と、PR担当「廣洋社」との共同企画で作ったときのものです。

映画の中に出てくる「新幹線」と「極道」というキーワードを取り出し、それを組み合わせて刺青として表現し、話題になりました。モデルにボディペイントをする時間を含め、撮影には合計8時間ほど要しました。今回はその写真のアイデアを作る方法をご紹介します。

写真の画質は良いに越したことはありませんが、スマホで見るとそこまで差はないので、なによりも「構図にインパクト」があり、かつ「どこか違和感がある」写真になるように心がけています。単にキレイな写真よりも「どこかおかしい」、「違和感がある」写真の方がSNS上でツッコまれやすいからです。

ネットではフリー素材の写真も手に入りますが、それらの多くは、汎用的に使える反面、インパクトに欠けています。ですから、オリジナルで写真を撮り下ろすことで、他の記事と差をつけることができます。

「インパクト」が出るアイデアは「記憶術」から発想する

インパクトとは、「記憶に残る」ことに関係していると思います。例えば映画でも、強烈なシーンほど記憶に残りますよね。一例をあげるとホラー映画『シャイニング』で、破壊したドアからジャック・ニコルソンが顔を出すシーンは有名です。

そして広告のアイデアこそ、いかに商品を記憶してもらうかが大事。であれば、「どうすれば記憶されやすいか」という仕組みを知れば、アイデアを発想しやすくなるのではないでしょうか。

記憶術には様々ありますが、最も応用できるのが、いわゆる「ゴロ合わせ」です。日本史の年号等々、脈絡のない数字や文字をゴロ合わせで覚えた経験を皆さん、お持ちだと思います。

この方法の応用で "ありえない映像"に変換して覚える方法があります。何かのパスワードで「4ru24」という脈絡のない文字を覚える場合を考えてみましょう。この場合、「4ru=よる=夜」「24=にじ=虹」と変換して、次のような「夜の虹」という、ありえない映像をイメージすれば、インパクトがあるので記憶しやすくなります。

Original photo by CEBImagery.com

これがもし、「昼の虹」であれば当たり前すぎて、記憶の中にある「虹」の映像が呼び出されるだけ。脳に何も書き込まれず、印象に残りません。

我々は普段、目の前の現実をちゃんと見ておらず、この図のように、現実に似た過去の記憶を見て生活しています。

対象そのものをじっくり見るより、対象がどの記憶に似ているかを判断することで素早く情報の処理をしています。

できるだけ脳に新規の書き込みを減らせるので効率的ですが、この仕組みこそ、記憶を妨げる原因になっていると思います。

しかし、ありえない組み合せによって、「これは新しい情報である」と判断されれば、脳に「夜の虹」が初めて書き込まれ、記憶に残ります。要は「これは、新しい情報だ」と脳をダマすような、ありえない組み合せを作るのです。

「火星に生物が発見された!」など、本当に新しい情報はそうそう出てきませんから、既存の要素を組み合せて、これまでにないものを作る方が効率的です。「そんなの思いつかないよ……」と思うかもしれませんが、ランダムな数列やキーワードを絵に変換するだけで、たいていありえない構図が作れます。

ハトマスク提供:林雄司(デイリーポータルZ)

「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」というのは、ジェームス・W・ヤングの世界的なロングセラー『アイデアのつくり方』の有名なフレーズですが、これまで説明した内容と比較すれば、あらためて「アイデアと記憶術は近い」ことがわかります。

つまり優れたアイデアとは記憶されやすく、だからこそ、広く普及もするのだと思います。これは、映画や小説のようなコンテンツから、広告、さらに商品といったアイデアが形になったあらゆるものに共通することだと思います。

日常の中では、アイデアを作る機会よりも、何かを記憶しなければいけない機会の方が多いと思います。日ごろから記憶術を使う習慣を身に着ければ、結果としてアイデアを出す力もついていくはずです。

さらには記憶する必要がなくても、目の前に広がる光景の中で、もっともふさわしくないモノを登場させる妄想を楽しむようになれば、アイデアを日々の生活の中でストックできるようになると思います。ホドホドにしないと病人になってしまうかもしれませんが……。

ちなみに漫画家の蛭子能収さんは、お葬式でよく笑ってしまうそうですが、それは、お葬式にふさわしくないモノを妄想しているのかもしれません。「笑ってはいけない」など、その場の禁止ルールが決まっている方が、ルールを破ったありえない組み合せをつくりやすいからです。

違和感は、ありえない組み合わせの他に、モノや人を極端に大きくしたり、視覚的に変化させることでも作れますが、葬式の例のように、社会的なルールから逸脱させることでも作れます。重要なモノを乱暴に扱ったり、逆につまらないものを丁重に扱ったり、場の空気を壊したり、様々な想像ができると思います。

例えば、私の好きな劇作家、ブルースカイ氏の劇では、「UFOが出現しているのに誰も気にせず世間話をしている」といった、重要なものを軽く扱う例や、「お嬢様がブタのモノマネを召使の前でする」という、主従が逆転するシーンがよく出てきます。

召使いいじめをするのが大好きなお嬢様がいて、召使に「ブタのまねをしなさい」と命令する。召使いが黙っていると、お嬢様が「こうするのよ!」と叫んで「ブヒー! ブヒー!」と召使いのまわりで四つんばいになって、ブタのモノマネを延々と行う。しばらくして、「あ~召使いいじめって楽しいわ」と言いながら去って行く……というものです。

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