「講座:ビジネスに役立つ世界経済」
【第36回】 ウクライナ問題は投機筋による「ショートゲーム」か?

〔PHOTO〕gettyimages

世界の金融資本市場がウクライナ問題で揺れている。ロシアのプーチン大統領が、当面のウクライナへの軍事侵攻に対して否定的な見解を表明したことで、一応の収拾を見つつあるが、状況は予断を許さない。

一応、ウクライナに属するクリミア地方には、ロシア海軍(「黒海艦隊」)の基地があることや、そもそもロシア系住民が多いことから、今後のウクライナ情勢次第では、ロシアの軍事進攻の可能性は残されている。

変動相場制移行でプラス成長を遂げたヤヌコビッチ政権

ところで、今回のウクライナ情勢の混乱は、ウクライナの反政府デモとそれによるヤヌコビッチ政権崩壊がきっかけとなった。ヤヌコビッチ政権は親ロシア政権だが、2004年の「オレンジ革命」で一度は失脚した。

だが、2010年の総選挙で政権復帰していた。2004年の「オレンジ革命」も、反政府デモをきっかけとした国民運動であり、これによって、親EU政権であるユシシェンコ政権が成立した。

ユシシェンコ政権は当初はうまく運営されたし、期待度も高かったが、2008年のリーマンショック以降の経済運営に失敗したことで信頼性を失い、ヤヌコビッチ政権の復活をもたらした可能性が高い(親EU勢力がユシチェンコ陣営とティモシェンコ陣営に分裂したことも支持を失ったきっかけとなったとされる)。さらには、その後のユーロ危機による欧州経済の悪化も影響したのであろう。

「オレンジ革命」以降のウクライナはIMFが推奨するような「構造改革」に着手し、高い経済成長を享受していた。

だが、経済の40%が「地下経済」と言われる「クローニーキャピタリズム」が横行していること、電力等のインフラ整備が不十分であること、人口減少に加え、国外への労働力の流出にも見舞われていることなど、様々な要因が絡み合って形成されている脆弱な経済基盤を変えることは容易ではなかったようだ。そのためか、リーマンショック後の回復は他の新興国と比較して思わしくなかった。

また、ウクライナはドルペッグ制を採用していたが、度重なる自国通貨(フリブニャ)買いドル売り介入で外貨準備が減少したため、変動相場制に移行した。ドルペッグを死守するために、国内の金融環境が引き締め気味だったこともリーマンショック後のウクライナの国内経済の回復を遅らせた一因ではなかったかと考えられる。これが、親EU政権の人気を急落させ、再びヤヌコビッチ氏が政権の座につく要因になった。

今では完全に悪者扱いのヤヌコビッチ氏だが、ヤヌコビッチ政権が通貨制度を変動相場制に移行した後は、年率で30%を超える通貨供給が実現し、これによって、2013年第4四半期の実質GDP成長率は前年同期比で+3.7%と6四半期振りのプラス成長となるなど、2013年終盤には景気はようやく回復基調に移りつつあった。

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