仕事、結婚、そして出産。人生は選択の連続であるけれど、女性たちは大きな意味での選択肢が男性よりも一つ多い。「今の仕事の忙しさ、楽しさを考えたら、いつ結婚して子どもを産んだらいいのかわからない」。「仕事もあきらめたくないけど、子どももほしい」---20代、30代の働く女性たちからそんな声が聞こえてくる。
世界8都市同時開催で様々なセッションを繰り広げた「SOCIAL MEDIA WEEK」にて、自分の問題意識から自ら事業を立ち上げることを選び、社会で輝く女性たちに仕事とライフスタイルについて話を聞いた。
スピーカーは、「HASUNA」の白木夏子さん、「Lalitpur」の向田麻衣さん、「READYFOR?」の米良はるかさん、モデレーターを筆者「現代ビジネス」編集部の徳瑠里香が務めた。
まず、彼女たちはなぜ起業、あるいは自ら事業を立ち上げるという道を選んだのか。それぞれの事業を紹介しながら、そこにある思いに迫る。
株式会社「HASUNA」の代表取締役兼チーフデザイナーを務める白木夏子さん。HASUNAは2009年4月に立ち上がったジュエリーブランドで、現在、表参道本店、伊勢丹新宿本店、名古屋栄店、オンラインブティックの4店舗を構える。HASUNAのジュエリーの特徴は、金、プラチナ、ダイヤモンドといったその原材料にある。
ジュエリー業界では直接取引が一般的ではなく、そこがブラックボックスになっていて、資源を巡って紛争が起こったり、低賃金で子どもが働かされるという現実が存在する可能性がある。つまり、美しいジュエリーは、貧困問題、さらには環境問題と密接に結びついているかもしれないのだ。
そうした負の循環を避けるために、HASUNAでは、原材料を可能な限り現地から正当な値段で直接買つけている。そのために白木さんは、例えば、パキスタン北部、首都イスラマバードから車で16時間かかる「フンザ渓谷」(「風の谷のナウシカ」のモデルにもなったと言われている場所)を訪れる。8000mの山々に囲まれるその地域では、水晶やアクアマリンなどの宝石が採れるが、その90%以上が密輸され、現地の人たちは貧しい生活を余儀なくされているという。
HASUNAでは、現地から直接宝石を買いつけ、さらにその地域の女性たちによる研磨を行う非営利団体から仕入れ、日本のデザイナー、職人によって指輪やネックレス等のジュエリーをつくり届けている。
「悠久の時の流れと、育まれた大自然。そこに生きる人々との、『美しい循環』を生み出すジュエリー」
それが、HASUNAの目指す姿。「エシカルジュエリー」とも呼ばれている。
ファッションデザイナーの母親を持つ白木さんは、幼少時代からものづくりに熱中し、ジュエリーには特別な思い入れがあったと話す。そんな中、大学時代に訪れたインドで、美しいジュエリーの裏側に、労働搾取がある現実を知り衝撃を受けた。大学卒業後は、国連でインターンをしつつ国際機関を目指すも、ビジネスで回していくことに意味があると思い直し、不動産系の投資ファンドで3年間働き、その後、起業した。
「インドで強い衝撃を受け、自分が作るジュエリーはそうはありたくないと思いました。こういった問題は、ビジネスを通じて解決していくのがいいと思い、そういった取組みをしている会社を探したんですが、海外にはあっても日本にはなかったんですね。ジュエリーと環境汚染などに関するレポートも英語ではあっても、日本語ではなくて。ならば、『自分がやるしかない』と思い、起業にいたりました」
白木さんは、起業した理由をこう語る。