栗城史多【第3回】「人は誰もが自分のなかでエベレストのような見えない山に登っている」
冒険を共有し挑戦の火を灯す「チャッカマン」という仕事
栗城史多氏と慎泰俊氏

⇒【第1回】はこちらからご覧ください。
⇒【第2回】はこちらからご覧ください。

体感を鍛えてバランス感覚を養う

慎: この対談では、プロフェッショナルの方たちに心技体を中心にお話をお伺いしているのですが、栗城さんにはここまでいちばん興味があった心の部分を聞いてきました。次に、体力をつけるためにどういうことをしていますか? 前にマグロばかり食べていたとおっしゃっていましたが……。

栗城: それは今はしていないですね(笑)。体力面では走ったりもしていますが、いちばんやっているのは体幹トレーニングです。体幹というのが非常に重要なんだと、ここ3年くらい思っています。

山登りが一般のアスリートとちょっと違うのは、筋肉があればいいかというとそうでもないんですね。筋肉というのは酸素を消費するので、酸素が少ないところに行くということは、筋肉がありすぎると逆にそれが重荷になってしまうんですよ。それでもそこそこ筋肉がないとダメですし、そのバランスが非常に難しいんです。

だから、一つには食事制限をしたりして、燃費の良い身体を目指すということと、もう一つは、体幹を鍛えてバランス感覚を養うことです。

冬山の場合は、夏山と違ってしっかりした足掛かりを強く踏みしめることが難しいです。雪の上だと身体がぐらついてしまって、すると脳が揺れるので、その状態が長時間続くと脳に影響が出てくるんです。さらに切り立った氷の壁を登ったりするので、体幹というものが非常に重要なんです。

あと、マスクをしながらトレーニングもしますね。ガスマスクのようなものを着けて、あえて酸素を入りづらくするんです。それで低酸素でも動ける身体を作っていきます。

慎: たとえば山岳地帯に住んでいる人たちが高所に強いというのは、慣れなのでしょうか?

栗城: 彼らはDNAもありますし、長年そういう地域で暮らしているので全然違います。やっぱり日本人には真似できないと思いますね。

慎: 生まれたときから標高4000mとか5000mの地域で暮らしているわけですからね。

栗城: やっぱりDNA的なものがあるみたいで、僕の山の先輩でも高所にすごく強い人もいれば、5000mを超えたらダメだという人もいるんですよ。あと、最近いわれているのは、お酒も関係するみたいですね。お酒が強い人は高所も強いといわれていて、これは当たっていると思いますよ。仲間でお酒が弱い人は、やっぱり高所に行くと全然ダメだったりすることがありますね。

慎: ランニングでも体幹はすごく重要で、僕も体幹トレーニングをやっています。腹筋と背筋と太腿辺りのところとか、やり始めると大分違いますよね。元々腰痛がちょっとあったんですが、あっという間になくなりましたから、やっていてよかったと思いますね。ウルトラマラソンもトレーニングで走りすぎると膝が故障してしまうので、体幹をどれくらい鍛えられるかがポイントらしいです。

栗城: 昔は山のトレーニングといったらスパルタ式で、60kgくらいの荷物を背負わされて山に登るということもあったらしいんですが、現代では考えにくいトレーニングですね。昔は登山も根性論の世界だったんですが、僕はそれよりも目標に向かってどう身体作りをしていくのかが重要だと思っています。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら