栗城史多【第3回】「人は誰もが自分のなかでエベレストのような見えない山に登っている」

冒険を共有し挑戦の火を灯す「チャッカマン」という仕事
栗城史多氏と慎泰俊氏

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体感を鍛えてバランス感覚を養う

慎: この対談では、プロフェッショナルの方たちに心技体を中心にお話をお伺いしているのですが、栗城さんにはここまでいちばん興味があった心の部分を聞いてきました。次に、体力をつけるためにどういうことをしていますか? 前にマグロばかり食べていたとおっしゃっていましたが……。

栗城: それは今はしていないですね(笑)。体力面では走ったりもしていますが、いちばんやっているのは体幹トレーニングです。体幹というのが非常に重要なんだと、ここ3年くらい思っています。

山登りが一般のアスリートとちょっと違うのは、筋肉があればいいかというとそうでもないんですね。筋肉というのは酸素を消費するので、酸素が少ないところに行くということは、筋肉がありすぎると逆にそれが重荷になってしまうんですよ。それでもそこそこ筋肉がないとダメですし、そのバランスが非常に難しいんです。

だから、一つには食事制限をしたりして、燃費の良い身体を目指すということと、もう一つは、体幹を鍛えてバランス感覚を養うことです。

 

冬山の場合は、夏山と違ってしっかりした足掛かりを強く踏みしめることが難しいです。雪の上だと身体がぐらついてしまって、すると脳が揺れるので、その状態が長時間続くと脳に影響が出てくるんです。さらに切り立った氷の壁を登ったりするので、体幹というものが非常に重要なんです。

あと、マスクをしながらトレーニングもしますね。ガスマスクのようなものを着けて、あえて酸素を入りづらくするんです。それで低酸素でも動ける身体を作っていきます。