官々愕々 アベノミクスの限界

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アベノミクスに限界が見え始めた。第一の矢、大胆な金融緩和で実現した円安により、輸出が増えるという計算だったが、工場が海外移転してしまったことなどにより、それほど輸出が増えない。

アベノミクス第二の矢である機動的な財政出動、すなわち、公共事業のバラマキの方も、すぐに、人手、資機材、ダンプなどの不足がコストアップとなって、大幅増益どころか減益の企業も増えている。これ以上予算を増やしても、工事の消化はおぼつかない限界状況だ。

さらに、安倍総理が再三強調した賃上げもほとんど進まない。所得がやっと下げ止まるかどうかという状況では、消費増税による生活への大打撃は必至。消費にはかなりのマイナス要因になるだろう。

しかし、安倍政権は、何故か根拠のない楽観的期待をもっているようだ。深刻な危機感はなく、アベノミクスの第三の矢、成長戦略が全く出てこない。

こうした状況は、国民から見れば深刻な事態なのだが、他方で、これを奇貨として、着々と焼け太っている連中がいる。官僚と族議員たちだ。

官僚たちは、今の深刻な状況を逆手にとって、「成長戦略」、「景気対策」の美名の下に、自分たちの利権をせっせと拡大している。安倍政権は「タマ不足」なので、官僚の振り付け通り、無駄なプロジェクトに予算をどんどんつける。

その最たるものが、官民ファンドだ。昨年は官民ファンド創設イヤーだった。農業関連、クールジャパン、耐震化改修の推進、新たな価値の創造、大学発ベンチャーの支援などなど、なんでもあり。官民ファンドというと、何か特殊なことをやるように聞こえるが、そうではない。単に、普通の投資に税金を入れるというだけだ。

官民ファンドの必要性として挙げられるのが、「民間だけではできないから官がやる」という理由だ。官僚にそんな能力があるのか、という批判には、「民間から優秀な専門家を連れてくる」と反論する。しかし、どこかおかしい。

普通のファンドなら、ファンドの経営者は、自分の資金も投資する。だから、儲かりそうもない事業には手を出さない。しかし、同じ人間でも官民ファンドに雇われると身銭を切らなくてよい。すると、民間ではできなかった事業に投資できるという。自分の金なら絶対に投資しないのに、国民の税金だから投資できるということだ。こんなに危ない話はない。これらのファンドには、必ず天下りや現役出向の形で、官僚のためのポストもできる。彼らにとっては、最高の仕組みだ。

こんなことを止めさせるのが政治家の役割だが、こちらは、「国土強靭化」「防災・減災」の掛け声の下に、地元への利益誘導に忙しい。本州との間に3つの橋をかけた四国。その借金を全国の高速道路料金で肩代わりすることになったのだが、「海峡横断道路」と銘打って、長大な橋やトンネルを作る計画が動きだす。正気の沙汰とは思えない。

さらには、武器輸出三原則変更さえも利権を生む。三原則を有名無実化して武器輸出を認めるのだが、その個別判断は、経産官僚が担うという。巨大利権の誕生だ。

東電福島第一原発の事故処理も無限に税金と電力料金を投入することが決まった。これが新たな公共事業となって、経産省がこれを完全に仕切る。数十兆円の利権を手にしたわけだ。原発推進の方針も決まり、既存の利権も死守した。

「笑いが止まらない」とはこのことだ。国民にとっては、「涙が止まらない」状況になっているのだが、どれだけの人が気づいているだろうか。

『週刊現代』2014年3月15日号より

原発の倫理学(税別価格:1400円)
話題作『原発ホワイトアウト』著者・若杉冽氏推薦! 「霞が関には古賀さんを隠れキリシタンのように慕っている官僚たちがいる。原発の裏も表も全部わかる必読書」

原発は「倫理的」に許されないエネルギーだという議論をすると、それは「感情的」あるいは「主観的」な議論であるというレッテル張りをされる傾向があります。経済論や技術論は受け入れられても倫理論は受け入れられないのが現状だと言ってよいでしょう。しかし、倫理の問題は、経済や技術の分野でも非常に重要な問題です。二人の元総理(小泉氏と細川氏)が期せずして脱原発を「人の生き方の問題」「倫理の問題」として語り始めたことは、極めて重要な意味があります。私が小泉氏や細川氏に期待するのは、大きな哲学、「脱原発の倫理観」を国民に提示し、国民的大議論を巻き起こすことです。議論の末、国民の大多数が新しい日本の生き方、「脱原発と再生可能エネルギーで、自然とともに生きる国日本」を目指すという共通の目標に到達すれば、その時初めて、脱原発が可能になるのだと思います。――<「はじめに」より抜粋>

※本書は2013年5月に先行発売した電子書籍『原発の倫理学 古賀茂明の論考』の内容を大幅にアップデートした上で再編集したものです。
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