廃部寸前の青島製作所野球部は「奇跡の逆転劇」を見せられるのか---ライバル社の策謀に立ち向かう男たちの熱い闘いを描いた池井戸潤作『ルーズヴェルト・ゲーム』

村上貴史(文芸評論家)

いちばんおもしろい試合、いちばんおもしろい作家

ルーズヴェルト・ゲーム』著:池井戸潤
価格:800円(税抜)
Amazonはこちら

■2013年
2013年は池井戸潤の年だった。

TBSテレビのドラマ「半沢直樹」が記録的な大ヒットとなり、その原作となった池井戸潤の著作『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』が爆発的に売れた。半沢直樹の決め台詞である「倍返し」が流行語大賞にも選ばれた。

だが、それらはあくまでも結果である。『オレたちバブル入行組』は2004年の刊行であり、『オレたち花のバブル組』は2008年の刊行であって、ドラマを意識して書かれた作品ではないのだ。昨年の増刷に次ぐ増刷は、ドラマのヒットによって過去の著作に光が当たり、それまで池井戸作品に手を出してこなかった数多くの読者が、彼の魅力に気付いた結果と理解すべきであろう。

江戸川乱歩賞を受賞した『果つる底なき』でデビューしたのが一九九八年のこと。その後『鉄の骨』(2009年)で吉川英治文学新人賞を獲得し、さらに『下町ロケット』(2010年)で直木賞を受賞するなど着実に評価を得てきた池井戸潤だが、2013年に大売れに売れた《半沢直樹》シリーズの両作品は、いずれもこうした受賞に先立って刊行されていた作品だった。その事実が、池井戸作品の実力を雄弁に物語っている。

その池井戸潤が、直木賞受賞後第一作として2012年に上梓したのが本書『ルーズヴェルト・ゲーム』だ。野球好きのルーズヴェルト大統領が、野球でいちばんおもしろいといった八対七の試合を指す言葉を題名とした作品だけに、野球が物語の大きな柱となった一冊である。そしてもちろん、べらぼうにおもしろい。

■二つの闘い
公式戦となるトーナメントの一回戦でライバルであるミツワ電器に大敗という、最悪のかたちでシーズンを締めくくった青島製作所野球部。その新たなシーズンは激動の幕開けだった。三月からの公式戦を控えた二月に、ベテラン監督の村野から辞表が届いたのだ。だがその辞任は単なる辞任ではなかった。こともあろうに、村野はミツワ電器の監督に就任するというのだ。しかも、青島製作所のエースと四番も引き抜いていった。青島製作所野球部、大ピンチである。

野球部を襲ったピンチはそれだけではない。青島製作所の業績が思わしくなく、従業員への解雇通告が進められるなか、野球部を廃部にすべきとの意見も当然のように出てきていたのだ。それだけで年間三億円の維持費を削減できる。創業社長であり、野球部に人一倍の愛情を注いでいた青島が会長に退き、野球部になんの思い入れもない細川が社長の座にあるだけに、廃部には十分な現実味があった。

野球部の部長を務める三上総務部長は、野球部を守ろうと奔走し、一方で五年前にヘッドハンティングされ、二年前に社長に抜擢された細川は、青島製作所を守ろうと奮闘する・・・・・・。