文庫の森
2014年03月01日(土)

TBSドラマ半沢直樹の原作者・池井戸潤の“もやもや感をバッサリ”やってくれる、痛快度ナンバーワン小説 『不祥事』この春、日テレ系で連続テレビドラマ化!

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解説:村上貴史(文芸評論家)

世の中をよくしていこう

 

新装版 不祥事』著:池井戸潤
価格:695円(税抜)
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■第十一作
勇気と夢を持って頑張ろう――池井戸潤が2011年に直木賞を受賞した『下町ロケット』を読んでそういう気持ちになった人は少なくないだろう。本稿執筆時点で32万部の大ヒットという『下町ロケット』に寄せられた賛辞にもそういう言葉が並んでいる。その『下町ロケット』と同じ根っ子は、2004年に単行本として刊行されたこの『不祥事』にも確かに存在している。

それを象徴する言葉を、ヒロインの銀行員・花咲舞が第一話「激戦区」のなかで放っている。

「そんなことじゃ、銀行はいつまで経っても良くならないわ」

そう。銀行をよくすること、皆が幸せになることを真剣に願って花咲舞は行動するのである。どうせそんなものだろうなどと斜に構えたりせず、変なことを変だといって、彼女は動き続けるのである。『下町ロケット』で、佃製作所の面々が大企業の論理や横暴に立ち向かいながら、あるいは困窮や疲弊に負けそうになりながらも必死でポジティブに動き続け、正論を貫き通したように。

そんな花咲舞が主人公を務めるこの『不祥事』、実に痛快な一冊である。

■全八話
第一話の冒頭で、ヒロインの花咲舞は、東京第一銀行代々木支店を離れ、事務部事務管理グループに異動する。本部調査役である相馬健の部下として、相馬と二人で事務処理に問題のある支店を個別に指導し、解決に導く臨店という仕事を担当することになったのだ。花咲舞にとって、相馬はまんざら知らない間柄ではない。代々木支店時代にも彼の部下だったことがあるのだ。

そんな仲であるにもかかわらず(そんな仲だからこそ、かもしれない)本部調査役として舞を迎えた相馬が漏らした言葉は「く、狂咲! なんでお前が――!」であった。上司を上司と思わないはねっ返りだった花咲舞を、相馬は狂咲と呼んで苦手にしていたのだ。

という具合に相当にとんがったヒロインの舞と、彼女をもてあまし気味で、しかもぐうたらで、かつ過去は凄腕の融資マンだった相馬のコンビが活躍する八篇が本書には収録されている。読者はその八篇をそれぞれに独立した短篇として愉しむことも可能であるし、全体を一つの長篇として読むことも可能な造りとなっている。

第一話「激戦区」では、自由が丘という競合他行も力を入れている土地を舞台に、東京第一銀行自由が丘支店でのトラブル多発問題が描かれている。トラブルのなかには三千万円の誤払いという大きなトラブルもある。優秀な人材を集めたはずの激戦区の支店で、一体何が起きているのか。相馬と舞は自由が丘支店に臨店する・・・・・・。

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