「すべての悩みは対人関係の悩みである」、「世界はどこまでもシンプルである」、「人は変われる。のみならず幸福になれる」---自己啓発の源流「アドラー心理学」の主張を1冊に凝縮した『嫌われる勇気-自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社)が10万部を突破し、大きな話題を呼んでいる。アドラーの思想とはどういうものなのか? 100年の時を越えたいま、なぜ彼の思想が求められているのか? 同書はどのようにして世に送りだされたのか? 著者である岸見一郎氏と古賀史健氏が語り合う---。
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古賀: 世界的に見るとアドラーは、フロイトやユングと並ぶ三大心理学者のひとりとして知られています。ところが、日本でアドラーの存在はあまり知られていないし、研究者も少ない。これはなぜでしょう?
岸見: その理由はいくつかあって、まずアカデミズムの世界でアドラーはまったく取り上げられてきていません。アドラーを専門にしている心理学者が、アカデミズムの世界にいない。私も専門はギリシア哲学ですし、「アドラー心理学」という講義を持っているわけではありません。「大学で学べない」というのは、普及を妨げる大きな要因になってきたのだと思います。
古賀: たとえばフロイトの精神分析は「原因があって結果がある」という、ある意味科学的なアプローチになっていますが、アドラー心理学は原因と結果の因果律を逆転させているので、科学的だと思われないこともある気がします。