【第2回】 序章 所得とは何か(後編)
財政赤字が拡大し、税収が不足している
日本経済の「最重要課題」は
名目GDPを成長させることにある!

【第1回】はこちらをご覧ください。

GDP(国内総生産)の拡大と国民の所得

前回、

「国民が働き、モノやサービスという付加価値を生産し、別の誰かがそれを消費、投資として購入することで所得が創出される」

と、解説した。所得創出のプロセスにおいて、付加価値の生産、消費・投資という支出、そして所得の金額は、必ず一致する。そのため、生産面のGDP、支出面のGDP、(所得の)分配面のGDPは必ず同額となり、これをGDP三面等価の原則と呼ぶ。

というわけで、2012年のGDPについて生産面、支出面、そして分配面の三つに分けて見てみよう。図の通り、2012年の名目GDPの生産面、支出面、分配面を見ると、項目はまるで違うわけだが、合計金額は一致している。支出面のGDPが大きく見えるかもしれないが、純輸出のマイナス(純輸入)という控除項目の金額が小さくないためであり、三つの面のGDPの合計金額は必ず一致する。

三つのGDPを見ると、日本の国民経済において「誰の労働が付加価値を生産し(生産面)」「どのように支出され(支出面)」「創出された所得がどのように分配されたか(分配面)」が手に取るように理解できるだろう。企業や政府が付加価値を生産し、民間、政府の消費、投資として支出され、創出された所得が雇用者(給与所得者)、企業、政府に分配されているわけである。

【図0-3 日本の名目GDP(2012年)】

生産面のGDP(単位:10億円)
支出面のGDP(単位:10億円)
分配面のGDP(単位:10億円)

出典:内閣府「国民経済計算」

ちなみに、生産面のGDPにおける「政府サービス」とは、具体的には行政サービス、警察サービス、消防サービス、防衛サービス(自衛隊)などが該当する。読者は警察や消防について「自分の周囲に存在して当たり前」と認識しているのではないかと推測するが、あらゆるサービスは誰かがコストを負担し、誰かが供給(生産)しなければ存在し得ない。実際、政府は税金という形で国民から所得の分配を受け、警察、消防、防衛などのサービスを供給している。

別の言い方をすると、政府機関である警察、消防、自衛隊が治安維持、防災、防衛といったサービスを供給し、それを「日本国民」が消費している。そして政府は費用を税金という形で、国民から徴収している、という話なのだ。

また、支出面のGDPを見れば、

「GDP(=付加価値=所得)を生み出す投資」

が、限定されていることに気がつくだろう。すなわち、民間の住宅投資、民間企業の設備投資、そして公的固定資本形成(公共投資から用地費など付加価値を生まないものを省いた金額)の三つである。

例えば、株式投資や土地への投資は、付加価値や所得を生まない。理由は、株式も土地も「人間が働いたモノやサービス」には該当しないためだ。

また、2012年の日本は(2013年もだが)純輸出(=財・サービスの輸出-財・サービスの輸入)がマイナスになっている。すなわち、純輸入状態にあるわけだ。純輸入が大きくなっている最大の理由は、説明が必要とも思えないが、

「原発を停止しているため、中東などからの天然ガス・原油の輸入が拡大し、国際収支上の貿易赤字が拡大しているため」

である。GDP統計上の純輸出は、国際収支統計上の「貿易収支」と「サービス収支」の合計なのだ。

現在の日本は原発を停止し、3.8兆円もの余分な「ガス代・油代」を中東などの外国に支払っている。これは、

「日本国民が稼いだ所得(GDP)から、産油国(カタールなど)に所得が3.8兆円分、プレゼントされている」

と、言い換えても構わない。無論、カタールなどの資源国は日本国民の所得の一部を受け取る代償として、LNG(液化天然ガス)や原油を我が国に供給している。とはいえ、そもそも日本は原発を動かしさえすれば、余計な油代を中東諸国に貢ぐ必要がないのである。

さて、三つ目の分配面のGDPを見ると、日本国民が稼いだ所得が、主に「雇用者報酬」として、給与所得者に分配されていることが理解できるだろう。

また、分配面のGDPにおける生産・輸入に課される税とは、消費税や関税だ。政府に分配される所得は、もちろんこの二種に限らない。企業は営業余剰から「法人税」を、家計は雇用者報酬から「所得税」「住民税」を政府に支払っている(租税負担率と社会保障負担率を合わせた日本の国民負担率は、40%程度だ)。

いかがだろうか。所得創出のプロセスや、GDPの三面等価について理解すると、我が国の経済の全体像が、おぼろげながらでも掴めてこないだろうか。少なくとも、GDPの拡大が「経済成長」や「豊かになる」ことを意味する理由は、ご理解頂けたのではないかと思う。

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