岸見一郎×古賀史健【第1回】今こそ求められる「承認」ではなく「貢献」によって自分の価値を実感する勇気

『嫌われる勇気-自己啓発の源流「アドラー」の教え』

岸見: ここで考えていただきたいのが「他者から承認されるかどうか」ではなく、「自らが他者に貢献できるかどうか」です。承認されることによって自らの価値を実感するのではなく、他者に貢献していくなかで自らの価値を実感する。

古賀: たとえば?

岸見: 夕食の後に家族みんながリビングでくつろいでいる。誰かが食器を洗わなければならないが、どうやら自分が洗うしかなさそうだ。ここで「なんで私が洗わなきゃいけないのか。どうせ誰も感謝してくれないのに」と思いながら洗っていても、誰も手伝ってくれません。感謝の言葉さえ、かけてもらえないかもしれない。けれど、「私は家族のみんなに貢献しているんだ」という実感を持ちながら、鼻歌まじりにお皿を洗っていたら、家族も手伝ってくれるようになるかもしれないし、ならないかもしれないし、たぶんならないでしょう(笑)。

ただ、それでも私は満足だ、という貢献感を持てるかどうか。そこが重要なポイントなのです。他者からの承認を求めていたら、自分に嘘をついた生き方、受動的で不自由な生き方になってしまいます。

古賀: つまり、「他者からの承認はいらない」という言葉は、「誰とも交わらず、孤高の人になれ」とのメッセージではない。他者から手を差し伸べてもらう(承認される)のを待つのではなく、こちらから手を差し伸べて(貢献して)いこう。他者への貢献を通じて、自分が必要とされていることを実感する。

岸見: その理解で間違っていないと思います。

【第2回】に続く

(写真/泉秀一 取材/徳瑠里香)

岸見一郎(きしみ・いちろう)
哲学者。1956年京都生まれ、京都在住。高校生の頃から哲学を志し、大学進学後は先生の自宅にたびたび押しかけては議論をふっかける。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門の哲学(西洋古代哲学、特にプラトン哲学)と並行して、1989年からアドラー心理学を研究。精力的にアドラー心理学や古代哲学の執筆・講演活動、そして精神科医院などで多くの〝青年〟のカウンセリングを行う。日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問。訳書にアルフレッド・アドラーの『個人心理学講義』『人はなぜ神経症になるのか』、著書に『アドラー心理学入門』など多数。本書では原案を担当。
 

古賀史健(こが・ふみたけ)
フリーランスライター。1973年生まれ。書籍のライティング(聞き書きスタイルの執筆)を専門とし、ビジネス書やノンフィクションで数多くのベストセラーを手掛ける。臨場感とリズム感あふれるインタビュー原稿にも定評があり、インタビュー集『16歳の教科書』シリーズは累計70万部を突破。20代の終わりにアドラー心理学と出会い、常識を覆すその思想に衝撃を受ける。その後何年にもわたり京都の岸見一郎氏を訪ね、アドラー心理学の本質について聞き出し、本書ではギリシア哲学の古典的手法である「対話篇」へと落とし込んだ。単著に『20歳の自分に受けさせたい文章講義』(星海社新書)。
 

著者: 岸見一郎、古賀史健
嫌われる勇気---自己啓発の源流「アドラーの教え
(ダイヤモンド社、税込み1,575円)
フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称される、A・アドラーの思想(アドラー心理学)を、「青年と哲人の対話篇」という物語形式を用いてまとめた一冊!!

amazonこちらをご覧ください。

楽天ブックスこちらをご覧ください。