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「ネット上の新しいエンターテイメントを生み出すことが編集者の仕事」---佐渡島庸平氏が語る「これからの編集者と働き方」

「時代が大きく変わってきている。

しかしながら、その変化を組織の中では感じることはなかなかできない。世間の風を直接受けることで、その変化を感じることができる」

そう語るのは、作家のエージェント会社コルク代表の佐渡島庸平氏だ。Social Media Week Tokyo(ソーシャルメディアウィーク東京)最終日に登壇し、「これからの編集者と働き方」をテーマに講演した。

作家が生み出した作品を、世界中に届け、後世にも楽しんでもらう。そのために欠かせない会社になるために「コルク」を設立した佐渡島氏。「今は、激動の時代」だと言う。

例えば、「暇つぶし」という言葉の意味合いが変わってきていることを挙げた。株式会社nanapi代表古川健介氏のブログエントリで知ったそうだが、昔は"映画を見ること"などが暇つぶしだったが、今は"わざわざ"行くことになってきている。そして今、5分~10分の細切れの時間が暇つぶしなのだ。

このように人間の中で時間の感覚が変わることは、なかなかない。さらに「コンテンツの長さに対する許容度が変わってきている」と語る。例えば、「サラリーマン金太郎(30巻)」のアプリは全巻無料。毎日30分だけ無料とし、それ以上読む人は時間を買わなければならない。

"モノを買う"から"時間を買う"時代へのシフト

佐渡島氏は「これまではモノを買うことにお金を払っていたが、今は便利さや時間など、目に見えないものにお金を払っている」とモノを買う時代から時間を買う時代へのシフトを示唆した。

モノの時代、そして質の時代。そしてデザイン、安さの時代。そしてストーリーの時代が来ている。ストーリー(よく見えないもの)の時代を佐渡島氏は「水」に例えた。

南アルプスなどの"質"が求められていた時代から、ペットボトル側を工夫する"いろはす"、購買とアフリカ支援を結びつけたボルヴィック(Volvic)の「1L for 10L」プログラムなど、現在はストーリーの時代に入っている。

「すべてのコンテンツに対してストーリー付けをしていくことが今の編集者の仕事。ライターやジャーナリスト、デザイナー、アーティストなど、多様な人材が関わってくる中で、それぞれのメディアに合った形で組み直していくこと。それが"編集ではないか」

佐渡島氏は、今求められている編集についてこのように語った。また、前払いから後払いへのシフトという興味深い仮説も紹介した。

モノがある時代は、前払いでしか買えなかったが、ソーシャルゲームの場合、ほとんどの人が無料で楽しみ、一部の人が有料でプレイしている。つまり、納得した人が後払いするシステムだ。特に先進国のようにネットが普及すると、このような変化も見られる。

前払いから後払いへのシフトは大きな時代の変化を予兆するものではあるが、佐渡島氏自身もその答えを探しているところだと言う。だからこそ、ベンチャーを立上げ、試行錯誤を重ねている。さらに、「ネット時代に情報がタダになる」というよく言われることについては、ただの仮説に過ぎないと述べた。

「長期的に見れば、変わってくるのではないか。新しい慣習を生み出して、クリエイターにとって理想的なお金の循環を生み出したい。答えは社会にあるはずなので、自分の心を観察して、答えを見つけていく」

自分の心を観察することについては、自身の経験を語った。

「ヤマダ電機PCを買いに行ったとき、店員さんに一度値切った。一方、アップルストアでは、値切らなかった。ヤマダ電機はモノを売っていて、アップルストアのモノは理念や想いが込められている。そういう心の動きがあった」

作り手の想いとモノが結びついている場合、タダにはならない。作家の印税が10%で、決済手数料90%という現状。インターネットを活用すれば手数料が大幅に減少できるので、コルクでは「ネット上でのマネタイズの道をつくること」をやっていきたいと述べた。

コルク」のウェブサイト
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